刀剣乱舞

□前の主、今の主
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ここ最近、雨ばかり降っている。暗いし湿気は凄いし、やることだって限られて来る


外で手合わせも出来ない。雨が降っているのだから畑に水を撒く必要だってない



「暇そうだね安定君」


「主…」


「加州君は一緒じゃないの?」


「いつも一緒にいるわけじゃないし」


「そっか、それもそうだよね」


「あいつのこと探してるなら僕は知らないよ?」


「いや、安定君がいたから声掛けただけなんだ。何か邪魔しちゃったかな、ごめんね」


「何もしてないよ。ただ外見てただけ」


「梅雨入りしちゃったね。湿気で髪が膨らむから嫌なんだけどなぁ」


「いつもと変わらないように見えるけど」


「そう?頑張って押さえてるの」



いつも元気に笑って、落ち込んだところも、泣いてるところも見せたことのない人。


刀を振ったことすらない細く小さな手が優しく頭に触れてくれるのが嬉しかったりする


それでも僕の主は沖田くんだけ。彼だけで十分であり、彼が大好きで…



「こうも雨が続くと気持ちが沈んじゃうよね」


「そう言うわりには主って元気だよね」


「あははっ、確かに。それだけが取り柄かな」



一人分くらい離れたところに座る主を横目で見ると、彼女は雨が降る庭を眺めていた


視線に気付くと僕の方を向いて笑って首を傾げる



「今日さ。政府の人に怒られちゃって」


「あぁ、定期集会…だっけ?」


「そう」


「何て?」


「結果を見せろってさ。中傷如きで進軍を止めるなって」


「まぁ、僕達は刀だからね。道具は使われてこそ…ってこと」


「でも嫌なの。その指示には あまり従いたくないかなぁ」


「お偉いさんからの命令なんでしょ?無視して大丈夫なの?」


「誰かが折れてしまうより、私が怒られた方がいいよ」


「……政府に逆らって命令違反で居なくなったりしたら、見つけ出して主の首落とすからね」


「うわ、肝が冷えた……」


「でも…大切にしてくれてるのはよく分かった」


「頼りない主だけど これからもお願いします」


「本当にね。沖田くんとは大違い」


「あははっ、だって君の主も偉人だもの。さてと…安定君が笑ってくれたところで私はお仕事に戻ります」


「まぁ、今の主は君だけどね。それより途中だったの?」


「休憩だよ休憩。休息も大切なんです」


「そんなんだから上の人に怒られるんじゃない?」


「あー、聞こえない聞こえない」


「主」


「はい、何ですか」


「僕も主に応えられるように頑張る、から…その……大切にしてくれてありがとう」


「こちらこそ いつもありがとう。早く雨上がるといいね」



そう言いながら頭を撫でられる。主が部屋を出ていくと、少し乱れた髪を整える


少し赤くなった顔を隠すように膝を抱え込むと、少し雨が弱まった空を見上げた



ーーENDーーー

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