刀剣乱舞

□月と狐
1ページ/1ページ



なかなか寝付けず時間だけが過ぎていく。もう皆は寝てしまっただろうか…枕元を見上げると時計の針は夜中の2時を指していた


そろりと襖を開け縁側に出ると、少し冷たい風が吹き 頬を撫でていった。そのまま腰を下ろし柱に頭を預ける



「ぬしさま」


「っ…ビックリした……」


「それは申し訳ございません。こんな夜中に如何なさいましたか、もしや眠れぬのでしょうか?」



微笑みながら私に近付くと、すぐ側で跪き 大きな手が優しく頬に触れる。



「まぁ、はい…今日は ちょっと寝付きが悪くて」


「このような冷たい床に座っては ぬしさまの体が冷えてしまいます。こちらへ」


「わっ」



胡座を掻いた上に横向きに座らされ、ぎゅっと強く抱き締められる。彼の柔らかい髪が首や頬に当たり擽ったい



「ぬしさまは柔らかいですね」


「皆に比べたら筋肉少ないからなぁ」


「とても心地の良い感触です。さぞ美味なことでしょう」


「ふふふっ、お腹壊しますよ」


「それは食ろうてみねば分かりません」


「駄目ですよ、小狐丸さん」


「おや、ぬしさまは意地悪ですね。この小狐を生殺しになさいますか」



迫って来た唇を手で止めると、彼は残念そうな顔をした。


だが直ぐに挑発的な視線を送ると、私の手を掴み 指先や手の甲、手首に唇を押し付ける



「ぬしさまは甘い香りがしますね。とても甘美で柔らかな…」


「ッ…小狐丸さん、擽ったいです…」


「ぬしさま…」



首筋に唇が触れる。柔らかな感触に肩が跳ねると彼の口元は弧を描き、満足げに微笑む


彼の赤い瞳と目が合い、ゾクリと背筋が凍るような感覚に少し眉を顰めた



「怯える姿も実に可愛らしい」


「っ…意地悪なのは貴方じゃないですか」


「はて、何のことやら。小狐には全く分かりませぬ」



そう言うと先程とは違う優しい瞳で目を細める。諦めて彼の胸にもたれ掛かると全身が包み込まれた



「小狐丸さんの髪は本当に触り心地がいいですね」


「ぬしさまに触れて頂くために毛艶を整えております故」


「眠くないんですか?」


「ぬしさまと過ごせるのなら眠る時間も惜しい」


「無理しないで下さいね」


「承知しております」



私が寝ない限り、彼も休まないつもりだろうか。だとしたら部屋に戻らなければいけない


ふと顔を上げれば雲に隠れていた月が顔を覗かしている。今夜も眩く美しい…その輝きに思わず見惚れれば視界が塞がれた



「小狐丸さん?見えません」


「これで良いのです。月などに ぬしさまを奪いさせはせぬ…」


「え?」


「いいえ、ただの独り言でございます」


「あの、そろそろ戻ります。小狐丸さんもお休みになって下さい」


「はい」


「おやすみなさい」


「おやすみなさいませ」



額に唇が触れる。彼は目を細めて微笑むと ゆっくりと襖を閉めた


少し熱を持った頬に手を当て、込み上げる恥ずかしさを誤魔化すように布団に入る


睡魔に誘われるがまま瞼を閉じれば、先程までの寝付けなさが嘘のように直ぐに眠りについた



――END―――

空に浮かぶ月と三日月宗近をかけてみたり。
ライバル的な。分かりにくかったですね

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ