刀剣乱舞

□少しずつ、ゆっくりと
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「あ、鳴狐さん いいところに」


「これはこれは主殿!何か御用でございますか?」


「お饅頭があるんですけど一緒にどうですか?一人で食べるのは寂しくって」


「………………………。」


「あっ、もしかして甘い物お嫌いでしたか?」


「いいえ主殿!鳴狐はご一緒して良いのかと申しております!」


「勿論です。一緒に食べましょう!あ、でも他の人には秘密にしてて下さいね。あまり数がないんです」



彼は数回瞬きをした後に人差し指を口元に近付け、じっと私を見つめたまま小さく頷く


内緒にすることを約束してくれたのだろう。嬉しくなって笑うと彼は無言のまま首を傾げた



「あははっ、すいません。嬉しくて笑っちゃいました。お茶の用意して来ますね」


「ああ、主殿!それなら我々が…!」


「いいんです。鳴狐さんと狐さんは待ってて下さい」



立ち上がろうとすると腕を掴まれる。腕に視線を落としてから どうしたのかと彼を見る



「鳴狐さん?」


「……一緒に行く」


「わ、分かりました。じゃあ一緒に行きましょう」



滅多に彼自身が喋ることはないので声が聞けて嬉しくもあり動揺もした


大丈夫だろうか、私の声、震えてしまっていなかっただろうか…



「主殿、もしや御自分で作られたのですか?」


「はい、一応…執務も終わって時間があったので。不格好になっちゃいましたけど」


「とんでも御座いません!とても可愛らしゅう御座います!鳴狐も喜んでおりますよ!」


「狐の饅頭……すごい…」


「ほ、本当ですか?ああ、嬉しいなぁ…頑張った甲斐がありました!」


「お見事な出来です!主殿は手先が器用なので御座いますね!」


「えへへ、ありがとうございます。狐さんのお饅頭はこっちですよ」


「なんと!わざわざ私めの分まで!」



お茶と饅頭の用意が整い お盆の上に纏めて乗せると、彼は片手でそれを持ち 空いた方で私の手を握った



「あ、あの…!」


「…嫌…だった…?」


「っ、嫌じゃないです」


「良かった…」



暖かな日差しが当たる縁側へ腰を下ろすと まだほんのりと温かい饅頭を手に取る


食べてくれるだろうか、美味しく出来ているだろうか。不安を挙げれば尽きない



「主殿!とても美味しゅう御座います!」


「ほ、本当!?初めて作ったから不安で不安で…鳴狐さんは どうですか…?」


「…美味しい」


「良かった!」


あまり食べ過ぎては光忠さんに怒られてしまうので少し小さめのを各自二つずつ



「暖かいと眠くなっちゃいますね」


「…もう寝てる」


「あ、本当だ…狐さんもお疲れなんでしょうね」



彼は丸まって寝ている狐さんを膝の上に乗せると優しい手つきで撫でた。口元は隠れているので分かりづらいが微笑んでいるように見える



「狐さん可愛い。撫でても大丈夫ですかね…?」


「うん」


「あぁ、すごいモフモフ…気持ちいい」



指先で遠慮がちに撫でると彼の膝の上でゴロリと寝返りを打ちお腹を見せた


ふわふわの毛並みを堪能していると自然と頬が緩んでくる



「本当に可愛い。癒されますね」


「……………………。」


「鳴狐さんは疲れていませんか?」


「問題ない…」


「それは良かったです」


「…多分、主の方が疲れてる」


「私は大丈夫ですよ」


「…………………………。」


「あー…まぁ、少しだけ眠いです…かね」


「…休んで」


「わっ、ビックリした…」



頭を抱き寄せられ そのまま軽くポンポンと叩かれる。突然の行動に心臓が早鐘を打つ



「…じゃあ少しの間だけ肩お借りしますね」


「……おやすみ」



欠伸を噛み殺して瞼を閉じる。夕餉までには起きないといけないと考えながらも意識はゆっくりと沈んでいった


ーーENDーーー

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