ゾロビン

□悪魔の記憶と怒鬼の報復 前編
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『悪魔の記憶と怒鬼の報復』  前編



久しぶりに栄えた島に辿りついた。

建物は白いレンガを基調として、高くそびえ人々は優雅に暮らしているようだった。
海軍の傘下に入っている訳でもないのに、治安もよく夜遅くまでバーやアルコールを出すカフェなどに明かりが灯っている珍しい街だ。

港に止める訳にも行かないサニー号を、かなり離れた入江に停泊させると夕暮れも近いのに、明日までじっとしている事もできない船長につられて一同が街へとくり出す。

思い思いの場所へと散っていくクルーだったが、道に不馴れな仲間を心配してその人物だけ同行者をつけたのだった。
しかしプライドの高いその驚異的な方向音痴の男は、そうとは気が付かず祭りのように賑わう夜の市場を楽しんでいた。


「なんだ、一緒について回りたいのか?」
「そうね、一緒について行っても構わないかしら?」


翡翠色の髪の男は、もう3本目となる地元の酒のビンを片手に、上機嫌で店を回っていた。
男の耳にした金のピアスが揺れる度、夜店からの光が反射して煌き『綺麗な物ね』と漆黒の歪みの無い髪の女は思っていた。

黒のタンクトップにこげ茶のパンツを履いたゾロと、袖の無い皮の黒ジャケットにミニのタイトスカートを履いたロビンだ。
足元を見ると、ゾロは雪駄を履きロビンは編みこまれたサンダル。

「お前も飲むか?」
「いいえ、遠慮しておくわ。」

試飲で一口飲んだとき、喉が焼けるようだった。
かなりのアルコール度数の酒だと解ったので、飲みながら歩くなんて芸当は無理だとロビンは悟っている。
そんな酒をこの男は、まるで水かジュースのように飲んでいるのだ。
しかも、酔っている風でもなくいつもより、少しだけ饒舌になるくらいで。


ゾロはまた1件の屋台の前で立ち止まり、焼いた肉の串焼きを購入している。

「お兄さん、今焼き立てが出来るからちょっと待ってな。」
「おう、旨そうだな。」

なんて店主と会話なんてして。

『ちょっと時間がかかりそうね。』

と思い、ロビンは隣のアクセサリーの露天を見ていた。
この地で取れる宝石、オパールのようである。

『鉱山があるのね。』

この島の裕福な印象は、きっと鉱石と宝飾が栄えているからなのだと思った。


***
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