アルエド エトセトラ

□オレは弟と仲がいい
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それからのアイツときたら、寝ても覚めてもその娘の話ばっかり。
学校だって一緒に帰る事も無くなってた。
だって、毎日その娘の家に通うようになっていたから。

「だって、ネコちゃんが心配なんだよ」

とか何とか言い訳して、いそいそと手にネコへのお土産を抱えて行くんだ。
出会ったその日だって病院に付き添った後、家まで送り届けてそのまま上がり込んでお茶を飲んだそうだ。
なんてたらしな男だったんだと、兄として心配になる。
ネコをダシにしていわゆるナンパだったんじゃねえか。
とか言いつつ、ちょっと前にオレが望んでいた事だったと考え直した。

アルフォンスの毎日は、彼女の出現で彼女一色へと変わる。
学校からの帰宅はさっさとオレを待たずに帰っちまうし。
家に帰ったとしてもすぐに彼女の家へと出かけてしまう。
そして家に戻ってくると、本当に事細かく彼女との本日の出来事をいちいち報告してくるので返事に困るんだよ。

「ふとした仕草が可愛いんだ」
「もうね、声を聞くだけでボクはトロけそうになっちゃうよ」

何てことはまだ序の口で、酷い時なんて

「ソファに座っているといつの間にか隣に居て、甘えて来るんだよ。その時の幸福感たら…今まで知らなかった感覚でさ、戸惑っちゃう」
「今日はね…家の人がいない隙に…キスしちゃった」

と頬をピンク色に染めて赤裸々に語りだす。
オレがまだ彼女も無く、一人で居る事を知ってるくせに。

酷い奴だ。

って、コイツの唇が…彼女の唇に…重なった?
あの可愛らしい顔の女に、アルが口づけをした??
それを想像すると、なんだか胸糞悪くなってきた。
オレより先にファーストキスを済ませたからか??
兄の威厳を保てなかったせいか?
いや、そんなんじゃねえ。


アルフォンスを取られたからだ。


それまでアルの隣はオレの場所で、それが当たり前すぎて誰かに奪われるなんて考えてなかった。
余裕かまして『いつだって彼女を作っていい』とか言ってた癖に。
いざそうなったら、どうしようもない程に落ち込んでんだからしょうがねえよな。
勝手にアルフォンスが告白されようが、言い寄る女がたくさんいようが相手にする訳がないと決めつけていた。
なんだよ、これ。
ひでェ兄貴だな。
別れちまえばいいとか、本気で思ってる。
そんな事、アルには言えないけど。

それでもオレは兄として、アルのする彼女の話を淡々と聞いてやっている。
表情にも出さずに、
『よかったな』
という言葉をまるでその言葉しか知らないロボットのように言ってやるんだ。
そんなオレの気持ちを知らないアルフォンスの言動は益々ヒートアップしていく。

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