アルエド エトセトラ

□オレは弟と仲がいい
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そんなある日、学校の帰りに捨てられた子猫が段ボール箱でニイニイ鳴いていた。
ネコ好きのアルフォンスの事だ。
きっと拾って『飼いたい』とウダウダ言うんだろうなと簡単に想像できる。
ウチはマンションでペット禁止だっていうのに、何度言っても聞きゃしねえ。

あと数歩でその場についちまうと思ったとき、茶色のふんわりとしたウェーブの髪の女の子がすすっとやって来て、その段ボールの中の猫を抱き上げて笑った。
猫は風邪でも引いてるらしく、きったない風貌でめやにだらけで目も開いてない。
でもその子はかまわずに、愛しそうに抱いていた。

「あら、あなた運が良いわ。よかったらウチの子にならない?」

そう猫に告げる。
笑った顔も目が大きくて、可愛らしかった。
へえ、こんな子近所に居たかな〜と思ったとき。
頭の中で雷がなった。
空を見上げても、青く澄んだ色しか見えない。
なんだなんだと不思議に思っていたら、隣のアルフォンスがガクガクしていた。
そしてこんな事を呟いた。

「・・・兄さん、どうしよう。ボク、惚れてしまったみたい」
「なにっ!?」

そうか、雷の音は弟が恋に落ちた音だったのか。
真っ赤な顔をして弟は、その女の子に話しかけた。






「ねえ、その猫さ病気みたいだね。いい病院知ってるから連れて行ってあげない?」

ちょっと早口で、いかにも動揺してますな感じでたどたどしく話す弟。
あんな弟の顔なんて、見たことねえぞ。
すると女の子の方も

「ありがとう、最近来たばかりでこの当たりよく知らないの。連れて行ってもらえる?」
「も、も、も、もちろん!!」

意識してますと丸わかりの返事で、弟はその子と病院へと歩き出した。
オレの存在を完全に忘れてしまったらしく、声もかけずにさっさと行っちまった。
そのまま、オレはどうする事もなく家に帰る。まあ、いいんだけどな…。

そうか、あんな風に弟は恋に落ちるのか。
というか、人が恋に落ちる瞬間なんてそうそうわかるものじゃねえ。
貴重な体験だったなァ・・・なんて、その日の夜は部屋のベッドで横になり天井を見つめながら思い返していた。


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