忍たま

□例えばそれは君が生きる為に
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「愛してる」
うん。
「僕も、愛してる」
嗚呼。嗚呼。
なんて、幸せそうな顔をするの。
ごめん、ね。

口付けを交わす。
留三郎の首に、腕を絡める。
愛してると、全身で訴えるような仕草、僕は出来ているだろうか。どうか、伝わって。
“愛してる”

僕の髪を撫でて、愛しそうな目線。
きっと伝わったね、僕の“愛してる”。そうでしょう。
だって君はとても幸せそうに、とても満足そうに、とても愛しそうに、僕を見てる。
だから僕も真似をして、幸せそうに満足そうに愛しそうに、それから少しばかり名残惜しそうに。君を見つめれば、きっとそれは“恋人の顔”になるよね?

「だいすき」
偽りじゃ、無い。


けれど、許してね。君の愛してると僕の愛してるは違うんだ。
「伊作、好きだ」
留三郎の言葉が、僕の身体を蝕む。

こんなにも愛してるのに、何でだろう。
僕の愛してるが、君の愛してるになれないのは。

ごめんね、ごめん。
君を愛せなくてごめん。
大好きだけど、本当に大好きだけど、君のためなら死ねるけど。
君の求める愛してるじゃないの。
世界でいちばん愛してる。自分自身よりも愛してる。
だから君の望みは全て叶えてあげたい。
君の望む僕になりたいし、君の望む全てをしてあげたい。

望むなら、なんだって出来る。
君が望むなら、なんだってしてあげる。

だから僕を愛してると、恋愛対象で愛してると、言った君にも答えたかった。
君の望む答えは「僕もだよ」だと分かっていたから、そう言った。そうでなければと思った。そうなろうと思った。君が望んだのだから。

でも違った。
ねえ、好きだよ大好きだよ愛してるよ。
僕は君のために生きるの。偽りじゃない。
でもね、違ったんだ。君の望む僕にはなれなかった。
ごめん、ごめんなさい。
だからね、演じるよ。君のために君の望む僕を、ずっと君の望む限り。
偽りだけど、偽りにしないから。
だからごめんね、君の望む僕になれなかった事に、どうかどうか気付かないで。



(僕の愛が必要というのならば、僕は嘘の愛を本当の愛の為に囁き続けるよ)
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