忍たま

□殺してください
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死ぬときに、傍に居たい子がいる。
死ぬときに、傍に居てくれる子がいる。


僕の世界の最期は、君であると良い。





「おいで」
手を伸ばす。

触れる、滑らかな肌。
ゆっくりと愛しさを込めて撫でる。
くすぐったそうに身を捩って、ジュンコは僕の愛に応える。

どれだけ一緒にいただろう。こんなにも長い時を過ごし、それでもジュンコは僕を飽きさせなど到底しない。
ひとつひとつ、すべてが愛しい。
生涯に渡ったところで、この子の輝く魅力全てなど、きっと知り得ない。ああ、なんとも悔しい事だ。
僕の命は短い。
そして君の命も、とても短い。

「ジュンコ、愛しているよ」
つぶらな目の端に、口付けを落とす。
こんなもので、僕の愛は伝わりはしないだろうけれど。


日が落ちてきて、少し肌寒い。
そろそろ眠ってしまう時期だろうか、僕の愛しい子。
寂しいね、短い人生のなかの、唯一長いその時間。出来ないと知りながらその時が来るのを拒みたいと願ってしまう。
君が深い眠りに落ちてしまう、この時が僕は嫌いだよ。僕が僕でなくなってしまう、この時が僕は嫌いだよ。ジュンコ。

とてもとても短い命なのに、僕らの共に過ごせる時間は更に短いだなんて、残酷なことだね。
君が眠りに入るとき、僕はきっと死んでしまうのだと錯覚に陥る。
君に会える春は、生まれ変わったような気持ちで毎年迎える。

短いと感じる命の中で、君に会えない時間だけはとてもとても長いのだけど、だからね、君に会いたいという想いだけで、僕は生きるんだよ。


「眠いのかい?」
丸い目を瞬かせているジュンコの頭を撫でる。

嗚呼、苦しい。
別れなければならぬ時期が、あと少し。
今年も忌々しい冬が近づいてくる。
そしてこの時期には、例えばを考えてしまう。僕等の、いいや僕のはどうでも良いね、きっと悲しいけれど僕より早くきてしまう、君の。最期のこと。
僅かの間だって僕は苦しくて仕方が無いのに、もしも一生、愛しいこの子と別れることなど、どうやって想像できよう。


僕の傍には君が居た。
君は僕の命で、生き方で、愛だ。

君が居ないならばそれは僕で無く、僕の人生はそこで終わり、世界は崩壊を辿る。


だから、お願いがあるんだ。

君が死ぬときには、僕を殺して。


最期はどうか



殺してください
(君の毒で)
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