新たな物語
□新たな物語-出会い-
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ガラリと店の扉を開いて、初めて見る男の子が入って来た。
上がりの所に座ったままいつも通りの対応。
「いらっしゃいませ〜♪」
その子は声を掛けたアタシを一度横目でチラッと見ただけで、視線を商品に戻した。
男の子は見るからにお金を持っていなさそうな、みすぼらしい格好をしていた。
(何にもなきゃいいんスけどね…。)
帽子の影から、男の子を見つめる。
男の子は商品を物色した後、両手一杯に駄菓子を手に持つ。
そして突然、それをズボンのポケットに突っ込み店の外に駆け出した。
(ああ、やっぱり…。)
軽くため息を吐いてゆっくりした動作で下駄を履き、後を追うように外に出る。
目で捉えられる距離を男の子は走っていた。
(追いつけない距離ではないっスね。)
少しだけ本気で走り、男の子を追いかける。
やがて男の子に追い付き、腕を掴んで男の子を捕まえた。
「放せ!放せよっ!」
息を切らせながら悪態をつき、男の子は腕を振り解こうと暴れる。
「まあまあ、落ち着いて…。」
「馬鹿か!落ち着ける訳…!」
叫んだと思ったら、突然男の子の体から力が抜け、崩れ落ちる。
「え?!」
慌てて男の子の体を支える。
どうやら気を失っているようだ。
「なんなんスか?一体…。」
そのまま男の子を置いていく訳にもいかず、男の子を抱き上げて店に連れ戻る。