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□電話越しの声援
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1月になれば、クラスの空気はピリリと常に電流が走っているような状況に変わった。
私もその中の1人で、休み時間も大人しく椅子についている。あの私が、だ。

普段だったら冷やかしてくる友達も、今はそんなふざけたこと言ってる場合ではないらしい。
私の教室は休み時間でも全員座っているという奇妙な光景が広がっていた。いや、受験生なら普通なのか。




「やば、ここほとんど忘れてる…」




欠点が見つかる度に焦りは増すばかり。欠点だらけなんだけどね。

あぁ、遊びたいなぁ。AOや推薦で決まってる子たちは遊び放題。楽しそう。
こっちはクリスマスだって彼氏と過ごしてないっていうのに。てか最後に会って話したのいつ。




「はああああぁぁぁぁ……」




家に帰っても勉強。溜め息を吐きたくもなる。
休憩時間だし、楽しいこと考えよう。受験終わったらーたくさん遊んで、バイトもして、買い物にも行って。あぁ考えるだけで今が辛い。今やりたいんだ、今。

暇つぶしに携帯をいじる。
そしてタイミングよくかかってきた電話に急いで通話ボタンを押した。






「もしもし、光っ!?」

『何やすぐ出るんやん。ほんまは勉強してないんとちゃいます?』

「してるよー休憩なんだよ、休憩!」





光から電話とか数回しかないから嬉しくて堪らなくなった。辛いのも一瞬でぶっ飛んだ。
電話だと幾分か優しくなる低い声に私の頬はゆるゆるだ。

私が受験だからと電話の回数も控えてくれていたらしく、そうとう久しぶりの会話。
カップルが距離開けたみたいな状態になっていたから、正直不安で仕方なかったりもした。だって光、彼女いるってわかってても年がら年中告白されてるんだもん。




『俺のこと待たせとるのに勉強してへんとか。それほんまやったらど突かせてもらいますわ』

「うわ、怖いっ。……もー勉強やだーほんとやだやらないわかんないー」




光にはついつい、本音を漏らしてしまう。
それは全部彼が受け止めてくれると知ってるからで。だから私はすぐに甘えてしまうのだ。
電話越しで彼ははぁ、と溜め息をつく。わ、とうとうため息吐かれちゃったヤバいかなこれ。初めてのパターンだよ。




『あともうちょいやないですか。最後のひと踏ん張り』

「だってわからないんだもん。覚えらんないんだもんパンクする」

『ぐちぐち言わんで頑張って勉強してください。俺のためにも』




…そうだよね。私が光に会えなくて寂しいように、きっと光も寂しい思いしてくれてるよね。
光が喜んでくれるようにいい結果出さないと。テスト終わったら光と遊び放題。そうだよ、あともうちょっとでパラダイス!!




「てか、用事?電話してきてくれるの珍しいよね」

『…いや、用は特にあらへんけど』

「…じゃあ何で?」

『先輩、ストレス溜まってるちゃうかなぁ思って。話相手にでもなれば少しは楽なれるかなぁなんて』

「光…好き!大好き!私のことわかってんね!!」

『当たり前やろ彼氏やで。てかそれ、直接言われたいわほんま。いつも電話しか言うてくれへんやん』

「直接は恥ずかしくて言えない」

『何やそれ』




光は好きだって言わなくても恥ずかしい言葉たくさんフツーの顔で言うよね。それ素で言ってんのかな。恥ずかしくないのかな。

他愛のない話を少しして。光は気を利かせてくれて終わりの方向へと話が進む。
切るの寂しいけど、仕方ないよね。ずっとこうやってるんだったら会ったほうがマシだもん。勉強頑張ろう、光からの応援電話ももらったし!よし!




『お預けくらうとか、先輩やなかったら無理やし』

「ありがと。頑張るね」

『ん。ちなつなら余裕やろ、さっさと片付けて遊びましょ』




せやろ?と撫でるようになめらかで甘い声で言われたら。
うん!と元気よく答える以外の回答がなかった。












電話越しの声援
(君の声は元気の源です)



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