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□鳴り響くウェンディングべル
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※社会人設定
「今日も連絡ないの?」
「うん……」
同僚に聞かれた審問に私は肩を落とした。
携帯を見つめ、さらに気分が落ちる。
彼氏の亮と付き合って早5年近く。
そろそろ私も結婚していい歳だ。
だけど、亮はそんなことさっぱり考えてない様子。
「どーすんの」
「どーするって…私は好きだし、別れる必要はないよね…」
「はぁ……気持ちはわかるけど相手は考えてないんでしょ?婚期逃したら大変よ」
同僚の言う通りだ。
独り身は嫌。結婚したい。
……出来れば、亮と。
だけど、あっちにその気がないのなら付き合っている意味がないわけで。
最近はお互い仕事で大変だし、会えていない。話す機会もなければ、連絡も取り合っていない。
私たち、結局どうなるんだろう。
ただ付き合ってるだけの関係で、終わってしまうのだろうか。
『今日の夜、空けといてくれ』
「……何て急な…」
その翌日、急に亮から連絡があった。お話聞いてたんじゃないかってくらいのいいタイミング。ちょっとビビった。
…正直、私にだって仕事があるし、無理だ。
なーんて、言えるはずがない。
久々に亮から連絡をもらえて嬉しいから。私もまだまだ恋する乙女だ。
頑張って仕事を済まし、約束してた時間に間に合った。
「急に悪ぃな、ちなつ」
「いや、いいけど……何、ココ、」
連れて来られたのはすごく高そうな高級レストラン。
惚けている私を見、少し笑った亮はとても穏やかで大人びているように見えた。少し会わない間に、またかっこよくなった気がする。
私の手を取って、中へ招き入れた。
わ、私の格好場違いなんじゃ…!
「ど、ど、どうしたの、何、このレストラン」
「ははっ、何ビビってんだよ。たまにはいいだろ」
「言ってよ…!!」
「サプライズなのに言ってどーすんだよ」
亮はイタリア語ですらすらとメニューを読み上げた。
さっぱりわからない私は任せっきり。氷帝学園を出ているだけあって、頭の良さは各が違うらしい。
出てきたメニューはキレイで美味しそうなものばかり。
目を輝かせていると、亮は1つ咳払いをして真剣な顔つきになった。私も、肩が強張る。
「……あのさ、」
「うん?」
亮はもう一度深呼吸をして、
小さな箱を、目の前に差し出した。
「…受け取って、くんねーか」
「……開けてもいい?」
「…おう」
パカリ。
小さな小さな箱を開けてみたら、小さく輝くがダイヤがついた指輪が入っていた。
目をまん丸にして凝視していると、亮が申し訳なさそうに「小さくてごめんな」と空笑いをした。
えっと…えっと………これって、まさか。
「式代がようやく貯まったんだ。……2人で、使わねーか?」
小さな指輪と、彼の照れ笑い付きのプロポーズ。
涙が溢れて、止まらなかった。
鳴り響くウェンディングべル
(これ以上の幸せはないよ)
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