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□カウントダウンを開始します
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「宍戸、待たせてごめんねー!」

「遅かったな」

「だからごめんねってば〜」




氷帝学園校門前。
俺はある約束があって、待ちぼうけしていた。

待つのは嫌いじゃねぇが、ここで学園の近くで待つのは嫌いだ。女子が話しかけて来る。


それでも我慢して待ち続けること20分。

ようやく出てきたアイツに俺は不機嫌丸出しで話しかけた。




「夏村のクラスとっくに終わってたろ。ジローの奴でさえ帰ったぜ」

「いや〜忍足くんの告白現場見てたら遅くなっちゃってさぁ」

「……最低だな」

「だ、だって!最後まで見たくなっちゃうじゃん!」

「言い訳になってねぇし」




約束していたというのはコイツ、夏村ちなつ。
幼等部の頃からの仲で、結構仲がいい。おかげで女は苦手だが、夏村は平気だ。

ちなつはヘラヘラ〜と小さい時から変わらない笑みを浮かべて謝ってくる。コイツ本気で謝ってるつもりなのか。




「ったく…何か奢れよ」

「もっちろん!私から誘ったのに待たせちゃったしね」




男女隔てなく仲よく出来る性格も、

ヘラリという効果音がつきそうなくらい緩い笑い方も、

俺の肩くらいの身長なのも……好きだと思うわけだが。



これはアレか、女としてなのか。






"それは女としてですよ、宍戸さん"


"はぁ?女としてに決まってんじゃん。ばっかじゃねーの?"


"宍戸、小学生からずっとじゃん。気付いてなかったの〜?"


"恋愛に決まっとるやろ!アホやな自分!微かな声でも気付くなんて…そんなん気にしてなかったらありえんやろ!メルヘンで恋愛もの苦手な宍戸がようやく恋…!なんやそれめっちゃええ「黙れ忍足」



「え、忍足くん?どこどこ?」






つい言葉に出てしまった。


忍足のやつ、恋愛とかロマンチック(?)とか…そういう類好きだからうるさかった。俺はそういうの苦手なんだっつーの。


そう思いながらシェイクを飲みほした。

目の前では同じく新作のハンバーガーを頬張る夏村。
俺から忍足、という言葉を聞いてキョロキョロと辺りを見回した。




「いないよ?」

「悪ぃ、間違えた」

「もー」




もっきゅもっきゅ、と食べていく夏村の姿はリスだった。
小動物と言う言葉がピッタリ当てはまるに対してピッタリの動物だった。合いすぎて笑ってしまう。

?を頭に浮かべていたが、特に気にしていないのか俺に質問してくることはなかった。
てか、そんなに急いで食べなくても誰も取らねーよ。




「もっとゆっくり食っていいぜ」

「でも宍戸シェイク飲み終わったし…」

「俺のことは気にすんな。お前食うの遅いし、俺も何か食うかな」

「む、早いもん!」

「何を根拠に言ってんだ」




昼飯もみんなが食べ終える頃にようやくパンの袋開けんじゃねーか。

また急いで食べだした夏村を俺は止め、とは違うもう1つの新作バーガーを購入した。






「あ、そっちも美味しそう」

「……やんねーぞ」

「あ、チョタくん」

「は、どこに「隙アリっ!」っコラ!」






うっわーまともに引っかかっちまった、激ダサ。

気付けばは俺のバーガーにかぶりついていた。
美味しいねぇ、と頬を押さえて味わっている。

溜め息をついて、俺はバーガーを見た。



―――…食えば、間接キス。






「あれ、宍戸食べないの?」

「…いや、食う「いっただき〜ぃ!」

「あ、ジロー!」






パクリ。


夏村が食った場所をキレイに、ジローの口はさらっていった。




「うっわ何コレ!めっちゃ美味いCー!!」

「でしょでしょ!?私も今食べたんだけどね、美味しかった!」

「へ、今?」




俺の葛藤は一体……。


ジローは俺を見て、肩に手を置いてすごい勢いで謝って来た。



いや、別に助かったからいいけど。

助かったけどさ。

何だろう、この虚しさは。














気持ちが繋がる、
カウントダウンを開始します



(俺の一方通行なんだよなー…)
(へ?何が?……好きな人でも出来たの!?)
(な、何でもねーよ!好きな奴なんかいねーし!俺はテニス一筋だ!)
(そ、そっか…よかったぁ。宍戸取られちゃうのかと思った)
(別に彼女出来てもお前とは………って、は?)
(え?)

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