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□そう、大嫌い
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「丸井くん丸井くん」




媚びる女は嫌いだ。




「丸井くんってば、」




可愛く見せようとするやつもダメだ。ぶりっ子とか吐き気がする。マジで。

基本的に女は好かねぇ。キャピキャピして、ねちねちシツコイから。


その中でも一番嫌いなのは――






「まーるーいーく「だぁー!うっせぇよ聞こえてるっつーの!!」






コイツだ。


マジうぜぇ、耳元で叫ぶなよ鼓膜破れる。

耳を塞ぎながら突っ伏していた顔をあげれば、夏村は満足そうな顔をして笑っていた。なんだよその顔、キモい。




「やっと起きてくれた。寝てたのにごめんね?」

「いいから早く用件言えよ」




ぶっきらぼうに答えた。

そう言えば夏村は傷ついた顔をした。悲しそうに眉を下げて、泣きそうな顔。


……うわ、またやっちまった。


その顔やめろよ、調子狂う。

俺が眉を潜めたことに気づいたらしく、その表情は消え、眉を下げながら笑った。




「えーっと、ノート出して欲しいんだけど…」

「ほらよ、」

「ぶっ!な、何するの、酷いっ!!」

「別に怒っても何ともねーから。ただお前のその面、うぜぇ」




夏村の顔にノートを押し付けてそう言ったら、驚いた顔をした。

その後ふわりと笑って、ありがとう、なんてお礼を言われた。

相変わらず意味わかんねー奴。どこをどう考えて俺にお礼を言うタイミングがあったんだよ。




「丸井さ、優しいよね」

「はぁ?意味わかんね」

「そうゆうとこ好きだなぁ」

「〜〜〜っ!」




は、はぁ!?
す、好きって何言って…!!

夏村の顔を見ればいつもと変わらないにこにこした顔。



……うっぜぇ。超うぜぇ。



何なんだよ、好きって友達としての好きかよ。

そうだよな、お前はみんなに平等で優しくて笑顔を向けて。

そういう素直なところが……。




「……俺は嫌いだ」

「、え」

「お前のそうゆうとこ、嫌いだっつってんの」

「そ、そっか……」




ごめん、と呟いて夏村はノートを持っていった。その背中に視線を向けながら俺はガムを膨らます。

パチン、と割れば隣からクツクツと笑い声が聞こえた。




「素直じゃないのぅ」

「はぁ?何言ってんだよ」

「好きなくせに」

「……嫌いだっつってんじゃん」














そう、大嫌い
(の反対だよ、ばーか!)


(そのうちホンマに嫌われるぞ)
(う、うっせー。嫌いなんだから逆に清々すんじゃねぇか!)
(そうしたら話しかけてもくれなくなるのぅ)
(うっ……い、いーんだよ!)
(はぁ……ガキ)
(っんだと!?)

(丸井に嫌われてるよー…どうしよー…)
(……めっちゃ好かれてるよ)
(そんなの嘘だよー…)

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