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□両手いっぱいの幸せ
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私の誕生日なわけだけど…きっと、覚えてないんだろうなぁ。何せ今日休日だし、うん。

別にサプライズとか期待してるわけじゃない。期待するだけ無駄だってこともわかってるし。


絶対絶対、忘れてる。


私はそう思いながらカレンダーに×印をつけた。

あと4時間ほどで私の誕生日も終わる。友達もたくさん家に来てプレゼントを渡してくれたし、ガッくんや宍戸だって、メールくれた。

でも、肝心の彼氏からはメールも電話も、ない。音信不通なのはいつものことだけど、今日ぐらいはいいんじゃないのだろうか。




「かといって、自分からメールするのも…」




誕生日祝って下さいって言ってるようなもんだし。私からはメール出来ない。


私はケータイの待ち受け画面を見ながらベットに倒れ込んだ。

くるわけないのに、待ってる私って乙女。




「…寝よ」




悲しくなるから。

どんなにお祝いされたって、どんなにおめでとうって言われたって。

嬉しかったけど、言われるたびに悲しかった。一番欲しい声で言ってもらえないのは辛いよ。


明日、慈郎に笑って会えるだろうか。会えないことはないだろうけど…はぁ。

誕生日くらいでネチネチ根に持ってるだなんて、馬鹿みたい。てかかなり重い女。




「ちなつー?ケーキ食べるわよー?」

「…いらなーい」




リビングからお母さんの呼ぶ声が聞こえる。私は寝っ転がったまま大きな声で返した。

返した途端、バンッと大きく開く扉。




「いらないじゃないわよ!せっかく買ってきたんだから食べなさい!」

「太る」

「毎日部活で動いてる子が何言ってるの!」




無理やり起こされて私は渋々と歩く。

今ケーキとかそういう気分じゃないのに…。私はそう思いながらリビングの扉を開けた。



パンパンッ!!






「誕生日おめでと〜!」



「え…じ、ろー?」

「はーい」




目の前には、三角帽子を被っている慈郎。私に向けてクラッカーを発射したのか、手には使い終わっているクラッカーが。

慈郎の後ろを見るとニヤニヤしている兄弟。

私は何でここに慈郎がいるのかわからなくて目をパチクリ。




「何で、いるの?」

「何でって今日誕生日じゃん!お祝いしに来たんだC〜」

「だって、」

「忘れてるとか思ってたのー?」




その言葉を聞いた瞬間、私はぶわっと涙があふれて来た。

慈郎はそれに驚いていて、いつもトロンとしている目が大きく見開いたのを覚えてる。

泣かないで、って言われて更に泣く泣く。優しく頭を撫でられて顔を覗かれて。
家族みんな微笑ましそうに私たちの方を見ていた。


恥ずかしかったけど、嬉しかった。

だって、絶対に忘れてると思って…。






「ばっかだなぁ〜。大好きな人の誕生日忘れるわけないでしょ?ってことで、はい!」






目の前に広がる花。

ピンク、黄色、白…可愛い色合いでまとめられてる花束を受け取る。

ニコニコと天使のように笑ってる慈郎に飛び付いた。














両手いっぱいの幸せ
(生まれてきてくれてありがとう、ちなつ)


(ぶっさいくな顔だなー)
(本当本当。お義兄さんにせっかく祝ってもらってるんだからもっと可愛い顔しなよ)
(えー泣いてるちなつも可愛いから大丈夫だよ〜)
(そんなこと言ってくれるのお義兄さんだけだよ)
(本当だよなぁ)
(いい息子もらっちゃったわ〜)
(……みんな、勝手に言い過ぎ)

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