愛犬万歳2
□AIKENBANZAI2
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おサル卿は鼻の穴と瞳孔を最大に開きっぱなしにして鼻息も荒く、紅茶をがぶ飲みした。
「トレドウェルっっっっ!!」
「はい、ご主人様」
傍らで一部始終を見ていたトレドウェルは、落ち着いた仕草で既に繋がっている電話を差し出す。
「あ?フミウス様?今、チラシ見たんだけど♪」
〜〜まさか探していた書きかけの<販促チラシの原稿>が、発送に紛れてパトリキの元に届くとは・・・・!
家令控え室で家令フミウスはほくそ笑みながら、カモ宅にお試し犬を送り届ける手配を済ませた。
しかも担当でもないおサル卿のお気に入りのスタッフ<乳売りアクトーレス>に、犬を連れて行かせるという念の入れようだ。
まさに転んでもただでは起きない敏腕家令の一人舞台ターンであった〜〜〜〜〜〜
アクトーレスが連れてきた犬に早速おサル卿は
「まず旅行に連れて行く前に適正審査だ!」
そこは小さなガラス張りの部屋の前だった。
「あの・・・ここに入るのですか?」
犬は怯えたようにその真っ白い清潔な器具が備えられた小部屋を覗き込んだ。
「そうだ。これが出来なきゃ連れて行けない」
おサル卿はふんぞり返って腰に手を当てている。
傍では執事とアクトーレスが苦笑して控えている。
「お前が行くかもしれない国は、魔法とミラクルなハイテクの国だからね。」
ガラス張りのトイレの前で言われても、信憑性も何もあったものではない。
変な飼い主のお試しに当たってしまったわが運命に諦めながら犬は大人しくガラス張りのトイレに入りドアに鍵をかけた途端。
「うをっ!?」
トイレは一瞬にして曇りガラスに変化した。
「ええええええーーーーっ!?」
犬は絶叫した。
「何だコレ?何の魔法? トイレの蓋が勝手に自分で開いたし、ドア閉めたらいきなり回りが見えなくなったぞ!!」
フフフフフとおサル卿の笑い声が聞こえる。
「本当はこのまま曇りガラスで用を足すのだが、オマエは犬だからこれからまたクリアガラスに戻すよ。もしもお前が合格したら、こんなトイレが日本にはイロイロエロエロ有ることを覚えておきたまえ!」
おサル卿が指を振ると、執事がすかさずコントローラーを操作し、部屋の不可視ガラスを操作して素通しに戻す。
いきなりクリアになった視界に三人の姿を認めた犬は
「キャッ★ エッチ!」と叫んで両手で局所を隠す。
「馬鹿、さっきから丸見えで這って来たくせに」
「エッチってヘンタイに喧嘩売ってんのか?」
「なんとまあ。犬甲斐のない@」
一斉に三方からツッコミが入る。
「だってよオ〜@」
犬はぶつぶつといいながら便座に腰を下ろした。
「なんか映画で見た未来のトイレみたいだな」
落ち着きなく周りを見回す。
どこまでも清潔でありながら無機質な感じがしないなだらかなフォルムを描く便座にはいろいろなボタンが付いている。
「これなんだ?」
犬はつい一番端のボタンを押してしまった。
突然、さらさらピロピロと<せせらぎの音と小鳥のさえずり>が流れ出す。
「ほえ〜!日本人が風流だって言うのは聞いたことが有るが、<自然が呼んでいる>に効果音が付くとは知らなかった」
犬が呟くと
「音消しだ。ばか」
「シャイな日本人に喧嘩売ってんのか?」
「なんとまあ、犬センスがない@」
また一斉にツッコミが入る。
「ちぇっ。知らないんだからしょーがないだろ。じゃあ、こっちはなんだ?」