愛犬万歳2
□AIKENBANZAI2
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「イッツ、ショータイム!」
おれは媚び笑いを浮かべ、ベッドの前でくるりとまわった。女物のキャミソールが雲のようにフリルを舞い上がらせる。
主人の顔に好色な笑いが浮かんでいた。
おれはムーディーな音楽をかけ、ベッドのまわりでくねくね踊った。主人の手が伸びる度にそれをかわし、下着のフリルだけを触らせてやる。
さらに目隠しをとると、主人の目を覆った。
「これ。艶姿が見えんじゃないか」
「こうすると、よけい感覚が冴えてエロい気分が高まるんですよ。オイル塗りますね」
主人の口が気の毒なほど笑みくずれている。
おれはエロい冗談を言い、主人のペニスをさすりながら、目で合図した。
同じキャミソールを着たクレイグが現れる。薄暗がりでもそれとわかるほどの興奮ぶりだ。
「あ……もう」
おれはかすれた声を出しながら、場所をクレイグにゆずった。クレイグがベッドに乗り、そろそろと尻を下げる。
「うアッ――!」
ペニスを尻に含んだ瞬間、彼は電撃を浴びたようにのけぞった。あわててその手をつかみ、口を押さえさせる。
「イヴォン?」
主人がいぶかって目隠しした顔をあげる。
おれは喘ぎながら、
「なんか、すごく、イイ。ご主人様は?」
「いいが、やっぱり見たいよ」
「ダメです。ペニスだけでぼくを感じて」
クレイグにはじめるようにあごをしゃくる。口をおさえていたクレイグはふるえるようにうなずき、腰を浮かせた。
「うふ――」
クレイグの腰が機関車の車輪のようにめぐりはじめた。
キャミソールの胸がはげしく喘いでいる。懸命に口をおさえているが、ふいごのような鼻息がもれていた。
「イヴォン――今日はやけに、絞り上げるな」
主人があえぎまじりに笑う。
「そう? ぼくも感じてるんです。ご主人様を、全身で」
「どれ、こっちは」
主人の太い指がクレイグのキャミソールをまくりあげた。ペニスをつかむ。
「ンヒッ」
クレイグが目を剥く。
おれは焦った。おれとクレイグではサイズがまるで違う。あわてて主人の指をはがそうとすると、クレイグがおれの手首をむずとつかんだ。
(こいつ)
クレイグは主人の太い指につかまれて、恍惚としていた。邪魔立て無用とおれを突き飛ばす。
もはやふたりの世界だった。
クレイグは主人のペニスを奥深くまでふくみ、からだ中で感じながら腰をくねらせた。
精悍な額から汗がたれ、睫毛の間からうれし涙がこぼれている。
「う……ンふッ」
年上の男に貫かれ、太い指でペニスを愛撫され、彼は歓喜で気絶寸前だった。主人の指が彼の濡れた亀頭を撫でまわすたびに、いななくようにふるえる。
「あふ、アアッ」
彼はこぶしを噛み、片手でキャミソールの胸を掴んだ。
レースの裾からあふれたでかい尻が悩ましげにおどりあがる。主人をしゃぶりあげ、揺れるたびに卑猥な音と滴が散る。
馬のようにたくましい尻が汗に濡れていた。主人の内股がジェルとたがいの体液でテラテラと光っていた。
「ハア、アアッ」
おれは彼に合わせて喘いだ。主人のほうも昂ぶりきっている。
「イヴォン――おお」
「ご主人様――」
主人の咽喉がぐっと詰まり、腰が硬くつっぱった。クレイグの腰がのびあがる。
クレイグのペニスから鋭く精が飛んだ。
彼は弓ぞりにそりかえり、エクスタシーに砕けそうになっていた。
「あ、アアッ!」
彼は悲鳴とともに主人の胸に倒れ伏した。
(なに?!)
「……イヴォン?」
おれはあわててライトを消し、クレイグをつかみ、ベッドから追い出した。
「このやろう、調子に乗りやがって」
すまんといいつつ、クレイグはいとしげにキャミソールをながめている。大満足らしい。
「これ一回だからな」
クレイグは余韻に浸って、返事さえしない。
もっともおれも、楽しくないわけではなかった。抱かれているクレイグはすさまじく色っぽかった。眉をよせた彼の横顔を思うと、下腹がじわじわと熱くなってくる。
もうしばらくしたら、またやってみたいなと思わぬでもない。
―了―
作/鈴鹿ふみ
企画/マダム・汁流
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