愛犬万歳2
□AIKENBANZAI2
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《Mal de Amores/恋煩い》
甘く退廃の香りが空間を満たし、深蒼の色彩に纏められた部屋は深海の様な薄闇に沈められていた。
四柱式のベッドに深く背凭れ、部屋の中央で踊る男を眺める。
裸で踊る男の皮膚には、薄っすらと汗が吹き出、その動きと共に伝い落ちていく。その様子を床に置かれた唯一の照明が浮かび上がらせる。
緩やかなリズムは次第に激しいものとなり、ドラマティックなラストを音楽と共に染め上げる。
上がった息を堪えながら、何時もの様に、踊り終えた印にこちらを向いてお座りの状態で忠誠を誓う。
「終焉を下さい。マイマスター。」
踊りの情熱と興奮でエレクとした彼に、射精する自由はない。
彼の股間の根元には、私への忠誠を誓う焼印が押されている。それが良く見える様に彼らには無毛の処置を施している。
私の許しなく射精した際は、焼印を重ねる事で彼らはけして粗相をする事はなくなった。
そうして、願うのだ。
それぞれの言い回しは違えども、私に許しを請うしかないのだと言う事を理解して。
「プ…プリーズ、マスター。」
無言の返答に、私の不機嫌を察知して、徐々に小さくなる声で彼は繰り返す。
私の不機嫌の理由に思い当たる事があるのか、微動だにせず彼はひたすら私を見つめる。
徐に彼に近づき彼が唯一身に着けるクルスを掴みそのまま鎖が千切れるまで引きずり倒すと、首の皮膚が少し裂けた様で彼の赤い血が滲んで美しい。
面倒になった私はベッドに戻る。
「乗れ。満足させなさい。」
それがどういう事なのか理解している彼は、サイドテーブルよりナイフを取り出し私に手渡す。
そのまま無言で私を口で奮い立たせると、自ら自身を貫き、再び私の上で踊り始める。
薄く何度も、皮膚を切り裂かれながら。
「ひぃっ!あっ!ああっ!」
浮かび上がるのは、汗の代わりに自らの血潮。
「お前は赤い血の色が良く映える。」
快感と痛みの波の中で恍惚と踊る美しい男。
涙を流しながら耐えられない天空の淵へと飛び立つその瞬間程、美しいものはないだろう。
「死を!プリーズマスター!!」
耳元へ唇を寄せ、呟きながら下から強く穿つ。
「逝け。」
甘く噛んだ耳介の柔らかな感触に、そのまま私の歯を突き立てたい欲望と戦いながら、震えながら絞り上げていく彼の感触を楽しみながらも、自らを解放する。
私の首元にそのまま力尽きたように凭れて、彼が甘える様に囁いた。
「今日のナンバーは恋物語なんですよ。」
殊勝な事を言ってみせる彼に、自分でも甘い事を自覚しつつも、原因が寂しさからだとわかっているから、そう強くも出れない自分に苦笑した。
―了―
作/ちゃか
企画/マダム・汁流
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