愛犬万歳2

□AIKENBANZAI2
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僕は恥じ入ってご主人様の肩に顔を埋めながら謝罪するも、尻たぶを優しく撫でられる感触に身体どころか声も尻すぼみになってしまった。 

座ったまま僕のために上体を倒してかがんでくれているご主人様が足のつけ根を支え、僕に身体を起こすように促す。

「まぁ、いい。だが、声はできるだけ小さく。声には気持ちが乗ってしまう。普段はできるだけ気持ちを身体に溜めるんだ。そうして、・・・奏でるときに、それを爆発させる。最高の音を出すために、最高の感情を身体に溜めるんだ」 

ソファにゆったり座るご主人様の膝の上で向かい合わせに座り、ご主人様の低く静かな暗闇に溶ける声を聞く。 

ご主人様の言いつけに僕は、小刻みに頷いた。

「良い仔だ。お使いもちゃんとできた。さぁ、ご褒美だ」 

お許しが出て、僕はご主人様のスラックスに手を伸ばす。

ベルトを外し、前立てを開ける。 金属のこすれる音が小さいように、チャックが奏でる音が小さいように、静かにゆっくり。 
僕の身体は期待を溜め込んで、時折震えた。

「ん、ふ・・・、・・・っ」 

すでに大きく熱を持っていたご主人様のを数度扱いて、僕は腰を上げ、片腕でご主人様の肩をしっかり掴み、もう片方の手で熱棒を支えた。 

充足の喜びが声になって逃げないように、後のことは考えずにご主人様の唇に自分の唇を押しつけた。

「・・・っ、・・・っ、んんっ!」 

お使いの間中穿たれていたおかげで僕の中は熱く潤んでいる。 そして、僕の熱ではない、ご主人様の熱が、硬さが、ようやく僕の喜びを解放させてくれる。 

たまらずに、ご褒美を自ら腰を振って存分に味わった。 

上の口も、下を互いに擦り合わせて唾液を混ぜ合って、飲み込みながら声が漏れないように必死に、貪った。 

優雅な調べが僕の意識を、僕の暗闇から引き上げる。 

ビオラの音。 

ご主人様の感情が乗った、最高の調べ。 
これは、この瞬間の音色は、僕とともに・・・、僕とのセックスで彼が感じた気持ちだ。 
最後の音が、暗闇に溶けるのを耳で味わう。

朝日が昇っても、ご主人様の部屋は厚いカーテンで暗闇を守っている。 
いつも離れたところで蝋燭をつけ、薄ぼんやりとした世界で、食事もバスタイムも。

・・・だけど、今日は、特別な日。

「誕生日、おめでとう」 

カーテンがご主人様の手で開けられる。 

普段、ステージでしか光を浴びないご主人様が、一年に一日だけ、たったひとりの観客、僕だけのために光で輝く。 

陽の光のスポットライトを浴びて、彼はビオラを構えた。 今日だけは、ベッドの上で一日中、彼の奏でるビオラを聞き、彼の笑い声を聞き、僕も歌う。 

首輪をする前、スポットを浴びて歌っていたように。 

僕もまたこの日だけは、彼の伴奏で彼のために、部屋の外にまで響き渡る声で歌うのだ。

「Happy Barth Day Dear master」 

二人の誕生日のために。 



―了―



作/サオト
企画/マダム・汁流




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