愛犬万歳2
□AIKENBANZAI2
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「ん、ふぅ・・・むぐっ」
ご主人様にとっては遠く僕にとっては近くに、部屋に一つだけ薄ぼんやりと足下を照らす蝋燭の光だけが光源。
よたよたと両手と両膝を使って、ご主人様の元へ歩み寄る。
ダークスーツに身を包んだご主人様の周囲は一層暗闇が濃く、暗闇がそろりと動いて、僕の頬を包んだ。
「お使いご苦労」
顔を包んでくれた柔らかな布の感触が首をたどる、その繊細な刺激にすら耐えられない。
「ふ、んん・・・ぁ・・・」
戒められた口から、自分のものとは思えない程に熱い息が漏れ、唾液が糸を引いた。
かろうじて床に崩れ落ちるのは肘で防げた。
紐の擦れる音がして、背中に張り付いていた革が背中を離れていく。
「ふ、ふぅっ」
革のケースが僕の背中から完全に離れたのを汗ばんだ肌が冷たく感じられることで知る。
無事に言いつけを守れたことを確信して、突っ張っていた肘から力が抜けた。 額に冷たくご主人様の革靴が触れた。
「よし、よし」
ケースを開けて閉じ、ご主人様が腰掛けているソファのサイドテーブルに丁寧に置かれた。
音はしない。
ご主人様はそろりと暗闇とともに動くから。
「ふ、・・・あ、はぁはぁっ、はぁっ」
ギャグをようやく外してもらい、胸一杯に空気を吸った。
革のケースで湿った背を撫でられ、恥ずかしい甘えた声が鼻を抜ける。
腕を促されてご主人様の肩に回す。
深く息を吸えたのもつかの間、背骨を手袋の手が下にたどって、肌がわななく。
「シー」
耳元に、ご主人様の静かにしろという指示が熱く吹き込まれる。
「ん、ん、んぅっ」
ご主人様の首をかき抱き、指を噛んでなんとか漏れる声を小さくしようとした。
じれったく降りた手袋に包まれた手が、双丘を割って、お使いの最中何事もないようにと銜え込まされた黒い尾の付いたディルドにたどり着いたとき、噛んでいた力がゆるんで・・・
「ああっ」
声を上げてしまった。
耳元で、ご主人様が苦笑した気配があって、しまったと思う間もなく、一気にディルドを引き抜かれ、また僕は声をあげてしまった。
「あ、ああっ。はぁ、はぁ、ご、ごめんなさい・・・」