愛犬万歳2
□AIKENBANZAI2
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もはやここで吊られたまま失禁するしかない運命だと分かっていても、決心がつかないのだろう。
涙声は哀れで、たまらなくセクシーだ。私のリビドーを的確に刺激する。
犬が可愛ければ可愛いほど、哀れであればあるほど、私のサディスティックな神経は研ぎ澄まされる。
私は鞭の柄で、犬の下腹部をゆっくりと、そして深く押した。
犬の呻き声が上がる。
苦痛からではない。苦痛を感じるほど強く押してはいない。
破裂しそうな尿意のせいだ。
「トイレじゃないだろう?教えたのにどうして言えないんだ」
犬の体は可哀想に、震えている。
普段鋭く煌いている黒い瞳は、尿意の事しか考えられず朦朧としている。
その顔に、CEOとしての面影は微塵も無い。
彼は、買収を中止することを条件に私の犬になった。
ただし、彼が犬になるのは毎年7月の最初の1週間だけだ。
バカンスに行くと言って、彼は世界から一週間、姿を消す。
そして、私の犬になるのだ。
1年のうちの、 たったの1週間。
まるで・・・この犬の国の言葉で何と言っただろうか。
そう、オリヒメとヒコボシだ。
もっともオリヒメの方は顔も見たくないヒコボシに鞭打たれるだけなので、伝説のように晴れの日を切なく祈ることなどないだろう。
別に構わない。
その代わり、雨が降っても雲がかかっても、私達は会えるのだから。
私はついに失禁しはじめた犬の背中を、尻を、優しく愛を込めて鞭打った。
「ああっ・・・ああっ・・・・! お、おしっこをさせて下さい! ご主人様・・・
・!」
犬が少女のような可愛い悲鳴をあげる。
ペニスの先から、ちょろちょろと尿が漏れ出ていた。
私はそのペニスに鞭を振るった。
吊るされた状態で痙攣した犬が、絶叫を上げる。それは今日彼が上げた悲鳴の中で、一番美しい音色だった。
「させてください、はもう遅いだろう? 恥ずかしい子だ」
鞭の衝撃で尿が前に飛び散り、床に降り注ぐ。
それを見てうなだれる、みじめな姿がたまらなくいとおしい。
外の世界ではもちろんのこと、他の時期にアクイラに来れば、お互い何食わぬ顔をして握手を交わす私達。
そのギャップを楽しむために、彼の犬期間を限定したのだ。
昨日の朝ドムス・アウレアで落ち合った私達は、そこから地下通路を通ってドムス・ロサエにやってきた。
放尿を終えた犬が、耐えきれず声を上げて泣き始めた。
「何か言うことは?」
鞭を休め、私が問うと、彼は躊躇いがちに口を開いた。
「も、申し訳ありませんでした・・・」
「それだけ?」
「か、勝手に・・・おしっこをして・・・申し訳ありませんでした」
完璧とはいえないが、よく言えた。
言葉でほめる代わりに、ぴんと硬くなっている乳首を愛撫してやる。
くりくりと指先で押しつぶすように転がしてやると、やや細めの若い体は素早い反応を見せた。
放尿を終えたばかりのペニスが、僅かに勃起し始めている。
素直で、そして官能的な反応に私は満足し、愛撫する手を舌先に変えた。
私がこの犬の体で唯一残念に思っているのは、体臭がほとんど無いことだ。
東洋系の体臭が薄いことは分かっていたが、彼からは何の匂いもしない。
かすかに薫るのは、彼を吊るす前に飲ませたコーヒーの香りだ。
体臭の薄い彼は、尿の色や匂いまで薄い。
床に飛び散った尿を見て、そのストイックな清らかさに私は瞠目した。
腸を洗ってやれば、少しは汚れを見せるだろうか。
来年は私のオフィスの隣を、調教部屋に改装しよう。今年は間に合わなかったから。
ドムス・ロサエの調教部屋の一室で、私達の夜は更けていった。
―了―
作/七瀬
企画/マダム・汁流
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