愛犬万歳2
□AIKENBANZAI2
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「会社をまるごと買収されたくなければ、私の条件をひとつ飲め」
こう言えば、彼は頷くしかない。
彼の決断には、社員3200人とその家族の生活がかかっているのだから。
屈した時の彼の絶望と覚悟の表情を思い出し、私はぞくりと快感に身を震わせた。
これはれっきとした脅迫だ。だが、ヴィラが彼を助けることは無い。
吊るした犬を鞭打ちながら、私は自分の素晴らしい思い付きに声を立てずに笑った。
ヴィラ・カプリは、脅迫者を決して許さない。
外の世界の抗争をヴィラに持ち込むことは、厳しく禁止されている。
それ以上に厳しく禁じているのは、ヴィラ内で得た情報を使って、外の世界で脅迫を行うことだ。
これは時に極刑を以って制裁される。
家令にも、私を会員に招待してくれた友人にも最初にこの規則を教えられ、私はそれを頭に叩き込んだ。
だが、今回の場合はどうだろう。
彼がCEOを務める会社の買収は、ヴィラと関係ない表の世界で正攻法を使って手を回したものだ。
そしてその買収を中止する代わりに体を差し出せと言えば、たとえ陵辱行為そのものがヴィラで行われたとしても、ヴィラに口出しする権利はない。
ヴィラが在っても無くても、行える脅迫と陵辱だからだ。
これで私は、脅迫者でありながら堂々とヴィラで彼の体を楽しむことが出来る。
「ヴィラの規則の隙間」という危うさに興奮した私は、鞭を更に激しく振るった。
続けざまに打たれた犬は、びくびくと痙攣し、痛みに喘いでいる。
その足が、不自然にぴったりと閉じている。
私は犬の股間に目をやって、苦笑した。
犬は、なんとペニスを足の間に挟んでいた。
失禁せぬための必死の策なのだろうが、滑稽で仕方がない。
滑稽で、そして健気だ。
嗜虐心が、更に頭をもたげる。
鞭を一旦休め、私は犬の正面に立った。
この子は仔犬ではない。
宙に浮いた脚は拘束していないが、反撃の心配はなかった。
腰骨から足の付け根にかけてを指でなぞると、犬は歯を食いしばって耐えた。
この子の感じやすい場所は、心得ている。
犬の表情は必死だ。
目を伏せ、唇を半開きにして、浅い息をしている。
眉間には浅めの皺が寄り、悲しみとも苦痛ともつかぬ絶妙な表情を作り上げていた。
「ト、トイレに行かせてください、ご主人様」