愛犬万歳2

□AIKENBANZAI2
100ページ/138ページ




「会社をまるごと買収されたくなければ、私の条件をひとつ飲め」

こう言えば、彼は頷くしかない。
彼の決断には、社員3200人とその家族の生活がかかっているのだから。

屈した時の彼の絶望と覚悟の表情を思い出し、私はぞくりと快感に身を震わせた。

これはれっきとした脅迫だ。だが、ヴィラが彼を助けることは無い。
吊るした犬を鞭打ちながら、私は自分の素晴らしい思い付きに声を立てずに笑った。

ヴィラ・カプリは、脅迫者を決して許さない。
外の世界の抗争をヴィラに持ち込むことは、厳しく禁止されている。

それ以上に厳しく禁じているのは、ヴィラ内で得た情報を使って、外の世界で脅迫を行うことだ。
これは時に極刑を以って制裁される。

家令にも、私を会員に招待してくれた友人にも最初にこの規則を教えられ、私はそれを頭に叩き込んだ。

だが、今回の場合はどうだろう。

彼がCEOを務める会社の買収は、ヴィラと関係ない表の世界で正攻法を使って手を回したものだ。

そしてその買収を中止する代わりに体を差し出せと言えば、たとえ陵辱行為そのものがヴィラで行われたとしても、ヴィラに口出しする権利はない。

ヴィラが在っても無くても、行える脅迫と陵辱だからだ。

これで私は、脅迫者でありながら堂々とヴィラで彼の体を楽しむことが出来る。

「ヴィラの規則の隙間」という危うさに興奮した私は、鞭を更に激しく振るった。

続けざまに打たれた犬は、びくびくと痙攣し、痛みに喘いでいる。

その足が、不自然にぴったりと閉じている。
私は犬の股間に目をやって、苦笑した。

犬は、なんとペニスを足の間に挟んでいた。
失禁せぬための必死の策なのだろうが、滑稽で仕方がない。

滑稽で、そして健気だ。

嗜虐心が、更に頭をもたげる。
鞭を一旦休め、私は犬の正面に立った。

この子は仔犬ではない。
宙に浮いた脚は拘束していないが、反撃の心配はなかった。

腰骨から足の付け根にかけてを指でなぞると、犬は歯を食いしばって耐えた。

この子の感じやすい場所は、心得ている。
犬の表情は必死だ。

目を伏せ、唇を半開きにして、浅い息をしている。
眉間には浅めの皺が寄り、悲しみとも苦痛ともつかぬ絶妙な表情を作り上げていた。

「ト、トイレに行かせてください、ご主人様」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ