TSUBASA Title

□血濡れのHERO
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血塗れのHERO






「あ、言葉わかるや」


  ヒュン

  ザシュッ


「小狼くんたち近くにきたんだねぇ」


 ヒュン


「この世界とももうすぐお別れだね」

 
 
 ブシュッ


「お祝いに今夜は酒盛りしようかー」



  バシュッ



「ね、黒りん」



 そいつは俺の目の前で呑気に笑いながら言った。
 似合わない赤がそいつの傍で拡散する。
 まるで現実味のない光景は、何度見ても目に不快だった。







 当面の仮住まいに戻れば、やはり距離のせいか言葉は通じなかった。
 それでも一方的な約束どおり酒瓶を運んできた男と、酒を酌み交わす。
 鼻歌でも歌いだしそうなそいつを横目で盗み見ると、相変わらず白い。

(赤は、コレには合わない)

 ここにきて半年。ようやくそれを見なくてすむと思えば酒は進んだ。
 酔いのせいにして絡めば、その細腕は誘うように身体を開く。
 女のように組み敷いて、支配して、啼かせてやれば、あの戦場に咲く毒々しい赤をまた思い出していらついた。
 いらついたついでに酷くしてやれば、抗議しながらも一層美しく啼くので、俺はそれで満たされた気になる。

「お前が人を殺すと思わなかった」
「?」
「俺が言えた義理じゃないが」
「Eu não Йвц o?」
「お前はもっと気性が優しいと思っていた」
「……?eu sйфbom」
「見た目に騙された」

 だからなんだ、というわけじゃない。
 自分だって呪いがなければ殺している。
 女のように啼かせていてもこいつは男で、力があって、俺と同列の(ある意味同種の)連れなのだから。

「いいや…なんでもない」

 思考を振り切るようにまた激しくしてやれば、金髪は光を反射してより一層淫らに虚空を舞った。
 およそ赤など見たこともないような清廉さのなかに死臭を嗅ぎつけて、願うようにそいつの身体を穿つ。

 俺達は所詮自分のためにしか生きられない。
 自分の願いのために他人を踏みつける。それだけの力がある。

(それでもこいつにそうしてほしくないと思ってしまったのは、自身の欲でしかない)

 血塗れの白は、明日も花びらを散らすだろうか。









end 

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