TSUBASA Title

□アカイツバサ
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アカイツバサ





ひとーつ、
ふたーつ、

重なる死体を踏み付けて、灰色の空の見えない場所まで、君と、二人で、


いきたい





 そこはもう、地獄かなにかのように死体しかなくて、幼い精神は一日目に崩壊してしまった。
 血が渇いても肉は腐らず、人形めいた(でも死体はやっぱり死体でしかない)それを、積み木がわりに重ねはじめるまで、さほど時間はかからなかった。

 オレは閉じ込められたファイがかわいそうで、かわいそうなファイをどうにもしてやれない自分がかわいそうで、だからオレはオレのために、外に出たいと思ったんだ。





みーっつ、
よーっつ、
いつーつ、


 重ねても重ねても、谷は空から遠のくように深く、声も祈りもまるで届かない。
 髪だけがのびて、のびて、その年月の長さを呪わせた。

 だけどファイにはない救いが、自分だけに用意されていることを知っているので、それを思って眠れば夢は安らかだった。

 いつしか谷には罪人とは思えない者も落ちて来るようになっていて、それらは稀に刀だとか銃だとかの希望を隠し持って煌めいていた。

 いつでも生を止めてしまえる喜びに心は躍り、心臓が刀に食い破られたがって早く早くと鼓動を急かす。

(でもファイは、死ねないから、)

 一人残していくことは、どれほど悲しいことだろう。

(ひとりにはしない)

 そう誓ってまた死体を重ねはじめる

(オレ、誓うから。ひとりにはしないから、だから、)

 雪が冷たいけれど、死体がきているコートは暖かそうだけれど、ファイもコートなんて着られないから、着ないよ。

(だからファイも、ユゥイを置いていかないで、ね)





ばさり





 新しい死体が足元にダイブしてきて、あまりのことに脳が働くことをやめ、息をすることすら忘れさせた。

 鮮やかな赤が、ファイの体をじわじわ蝕んでいく。

(この赤が、ファイを連れていく)


 かなしくてかなしくて、
 かなしくて、
 かなしい

(ひとりで、いってしまう)

 ひとり残された自分がかわいそうでかわいそうで、生きていたことを忘れたかった。

 そしてオレはオレのために、オレの名前をこの世界から消した。










End

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