TSUBASA Novel 2

□共に在ること
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共に在ること









 胡坐をかいた黒鋼の膝に額を埋めて、ファイはずっと動かない。
 そのファイの頭の上でお猪口に注いだ酒を飲みながら、黒鋼はずっと考えている。

(こいつを日本国に連れてきたのは失敗だったかもしれねぇな)

 旅が終わり、まるで当たり前のようにファイを日本国に連れ帰った。
 ファイが困ったように笑う理由を知りながら、それを無視して半ば強制的に。
 もう大丈夫だと思った。旅は終わったのだから苦しまなくていいのだと思った。
 傍にいればファイは笑っていられると思っていたし、黒鋼自身の心も安らぐと思っていた。

「黒様……ごめん」
「謝るな。悪いと思ってないだろう」
「思ってるけど…」
「それは俺が怒ってるからだろうが。反省してるわけじゃねぇ」
「だって…オレ…できないよ……無理だよ、あんな……」
「出来ねぇ意味がわかんねぇ」
「できないよ…!ねぇ、オレもうイヤだよ、ここにいられない…っ」
「馬鹿かテメェは!」
「だって!」
「慣れろ!」
「オレこの国に来ちゃいけなかったんだよ…!」
「…ちっ」
「……だから……殺して……黒様の手で……」
「俺はお前を手放す気なんざねぇ。死なせる気もな」
「辛いんだよ……」
「俺がいるのにか」
「だって黒様怒るんだもん……」
「あたりまえだろうが!刺身も魚の骨も食えねぇ、酢も食えねぇ、納豆や漬物にいたっては腐ってるだのなんだのと…テメェは日本食馬鹿にしてんのか!」
「頑張ったけどだめだったんだよ!受け付けないんだもん仕方ないじゃん!」
「侮辱としか思えねぇ!慣れろ!」
「黒様だってオレの作ったブルーチーズ食べられなかったじゃない!」
「あ…あれはカビが生えてやがったじゃねぇか!」
「納豆は腐ってるよ!」
「この……っ……!」
「黒様なんか嫌いだーーー!」


 平和な一日が過ぎていく。
 かつて望んだ、永遠に叶うことのないと思っていた安息の地がここにある。
 必然の名を借りた奇跡を超え、ようやく辿りついた旅の終わり。
 愛しい人の傍。










end
ギャグですよ

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