TSUBASA Novel 2

□永遠の約束
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 海を隔てた外国から使者が来るという話しを聞いて、次元が違う世界から来た自分の境遇と重ねたファイは単純に興味を持った。

「ガイコクから来る人もやっぱりサシミ食べるのー?」

 ファイのその台詞は他意のないものであったが、それを聞きつけた蒼摩は『確かに』とひどく納得した様子で膳の献立について知世に相談しにいった。
 そこから話が広がり、日本人が当たり前と思っていることが失礼にならないようにと、ファイが使者の世話を仰せつかったのが始まりだ。



「まさか泊り込みとはねー。しばらく黒様ともお別れかぁ」
「そうでもねえ。お前らの泊まる屋敷の警護は俺がすることになった」

 なんでもないことのように言われ、ファイは隣に胡坐をかいて座っている黒鋼を横目で見た。

「黒様ってたまに過保護だよねぇ…」
「なんのことだ」
「志願したんでしょー?」
「してねぇ!知世が勝手に…!」
「知世姫も君に甘いよねぇ」

 クスクス笑うと、黒鋼はばつが悪そうにそっぽを向いた。

「使者ってどんな人かなぁ」
「前に来たヤツは瞳が青かったな」
「えぇぇ!?この世界ってみんな黒髪黒眼じゃないの!?」
「ああ。この国じゃ大抵そうだし、隣国もそうだが…蒼摩だって肌の色が違うだろう。あいつは親が南の国の生まれだ」
「知らなかった…。ってことは、オレみたいな髪の色とかの国もある?」
「…あったら行きてぇのか?」

 黒鋼が不機嫌そうに問いで返したので、ファイはへらりと笑った。

「あー。今オレが行っちゃうと思ったー?オレが行ったら寂しいー?」
「別に。テメェが行きてぇなら勝手に行けよ。そういう国もある」
「意外とばっさり切り捨てたね黒りん…ちょっとショックー」
「テメェはこの国に合わねぇんだろ。俺にはどうしようもできねぇからな」

 ぐさり、と、何かが突き刺さる気がした。

「……そうだね」

 合わない、とはどういう意味だろうと考える。
 ファイ自身はなんとか言葉も覚え、少数ではあるが日本国の人間とも打ち解けてきたつもりでいたのだが、黒鋼にはそう見えていなかったのだろうか。

(もしかして黒様もオレのこと、もてあましてるのかな……そうだよね。この国にきてから周りの人にオレのこといろいろ聞かれただろうし…)

 売り言葉に買い言葉で、何の気なしに返されただけの言葉に違いない。
 そうは思うのに、思考は勝手にループする。
 自分がここにいることが、ひどく不自然なことに感じられた。

(オレはいつまでも、この国の人と同じにはなれない)

 そんなことは初めからわかっていたし、黒鋼が傍にいるならそれでもいいと思っていた。
 けれど黒鋼がファイを傍に置くことを疎ましいと思い始めているのなら…傷つく前に、傷つける前に、離れるべきなのかもしれない。
 きっと本当に拒絶されたら耐えられない。その前に自分から幕を下ろしてしまえばいい。

(なんでもないことのように笑って、また旅に出ればいい)

 そこまで考えたところで、ぐいっと強く腕を引かれ、ファイの細身が黒鋼の膝の上に倒れこんだ。

「なっ…!」

 抗議の声をあげようとして顔を上げると、強引に顎を押さえられ強く唇を奪われる。

「ん…ッ…!ふぅ…ッ」

 呼吸困難になるほど深く、長く口付けを与えられ、部屋に淫猥な水音が響く。

「…はぁ…ッ…ふっ…ッ」

 ようやく開放されたころには、ファイは脱力し、畳に両手をついて肩で息をしていた。

「もーなんなの黒様…いきなり……」

 はぁーと長く息を吐いて、ようやく呼吸を整えたのも束の間、今度は黒鋼の右手に両手首をとられ、押し倒されてしまう。
 呆気にとられている間に腰の帯を抜かれ、頭上で両手を縛られてしまった。
 真昼でしかも縁側の襖もあけたままだという状況に、サーっと顔が青くなる。

「は!?え!?」
「仕置きだ」
「なんの!?っちょ、はなし…」
「お前今、本気で他国に行こうと思っただろう」

 本気で出国計画を練り始めていたわけではないが、漠然とそうしたほうがいいのかもしれないと思っていたファイは否定も出来ずに眼を逸らした。
 その様子に黒鋼が舌打ちする。

「やっぱりな」
「思ってない!思ってないから!ちょっと離して!」
「はなさねぇ」
「なんで!」

 じたばたと抵抗すると足を押さえられ、無理矢理開かされた。
 そのまま後孔に指を這わせられ、ぐぐっと中に押し込まれる。

「やっ…ひっあ……」

 ぐちゃぐちゃと確かめるように中を探られ、腰が自然と浮いてしまう。
 慣らされた身体はすぐに快感を見つけ、貪欲に指を味わいはじめた。

「あっ…ッん…ぁぁ…ッ」
「ああ言えばお前が『外国になんか行きたくねぇ』って言うかと思ってたんだがな」
「君が…ッ…合わな、いって、……!んん…ッ」
「ああ、そうだな」
「やめ…やめて…くろ、ひッ!…ぅぅうッ!」

 指を抜かれ、それとは比べ物にならない質量がファイの中に捩じ込まれて、ファイは悲鳴をあげた。
 ギチギチと容赦なく奥に押し込まれ、苦しさに涙が浮かぶ。
 さっきからただでさえ息が乱れていたのに、過呼吸にでもなってしまいそうだった。

「はっ…はッ…ッあ…ッ」

 奥深くまで埋め込まれて、首筋に舌を這わされる。
 そのこそばゆさに意識を逸らされた瞬間に、体内で律動が開始されて、また声を上げる。

「んん…ッくろ…さま…ッあ…もう、許し…ッ」
「きこえねぇ」
「い、きたい、いきたい…!」
「さっきも言ったろ。イケよ勝手に」
「な、にそれ…ッ!」

 さっきの外国に行く行かないの話を根に持っているらしく、黒鋼は意地悪く笑った。
 ファイの内部を穿ちながら、一向にファイの熱に触れてくれない。
 もう少しでいけそうだというところで、内部を抉るのをやめられてしまい、ファイが苦しげに喘ぐ。

「やだ…や…ッ…お願い黒様…ッ」
「仕置きだっつったろ」
「いかせ、て、もう…ッくるし…」
「わからせてやる。お前が誰のモノなのかをな」
「とって、これ…とって…!」
「駄目だ」
「あぁ…ッ…ぅ…」

 達することのできないもどかしさに細腰を捩る姿は淫猥で、扇情的だ。
 黒鋼の中にもゾクゾクした快感が湧き上がって溢れていく。

「黒様…くろ…っう…」
「お前やっぱり使者の世話なんてやめろ。なにか感化されて国外に出られたら溜まったもんじゃねぇ」
「いかない…いかない……から……っ」
「お前は死ぬまで俺から離れられねぇんだよ」
「はなれな……っ」

 もうファイは聞いているのかいないのか、うわ言のように黒鋼の言葉を返すだけだった。
 よがり狂うぎりぎりのところでようやく屹立に触れてやる。黒鋼ももう限界だった。

「んっ…うっ…ふ……ッ」
「中に出すぞ」
「ん、うん、して、出して、ちょうだい、ぜんぶ、ッ」
「は……くッ!」
「あッ…!は、ぁッ、ああッ!」

 激しい抽挿に二人の身体が踊るように上下する。同時に達して、二人は倒れこむように畳に転がった。

「……死ぬ…かと…おもったぁー…」
「アホ。あれくらいで死ぬかよ」
「君も下やってみたらいいと思いまーす…」
「気色悪ぃこというんじゃねぇ」
「あー…うー……」
「よかったんだろ?いいじゃねぇか」
「よかったけど……」

 ファイは文句を言いながら、ふいにおかしそうに笑みをもらした。

「あんだよ」
「いやぁ…すごいプロポーズされたみたいだったから」
「…フン」

 気恥ずかしいのか、黒鋼はそっぽを向いてしまった。ファイは笑う。
 まだここにいてもいいのだと、許されたことが嬉しかった。
 それが永遠だとは、まだ信じられないのだけれど。
 少なくとも今は、この幸福にひたっていていい気がしていた。










……続く?かも? 
 








 






 

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