ロイエド小説

□風邪
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「38度5分…完全に風邪を引いたな…コホッ」


ロイは一人呟くとベッドに横になる


朝から頭は痛いし、身体はだるい、気分も悪く、最悪な日だと思うロイだった


司令部に電話を掛けても忙しくて構っていられないのか、リザが「そうですか、お大事に」と素っ気なく答えるだけだ


ロイは一人暮らしの為、こんな時に身の回りの世話をしてくれる人もおらず、全部自分でやるしか無い


一日横になって休んでいれば治るだろうと思い、水と薬を持ってベッドに戻った
 
 
薬を飲もうと説明を読むと、そこには“食後”の文字が…





         …やめた。



さすがに今から食事を作って食べる元気は無く、仕方なく薬を飲むのを諦めて横になった
 
 







東方司令部――‥


コンコン     ガチャ


「大佐いるー?」


エドワードが報告書を持って顔を出した


「あら、エドワード君こんにちは。大佐なら今日は風邪を引いて休んでいるわ」


「えっ、風邪?」


「そうなのよ。悪いんだけどエドワード君、報告書を出すついでに大佐の様子を見て来てくれないかしら?」


リザの申し出にエドワードは「何で俺が…」と言いかけたが、普段の仕返しに風邪で弱っている大佐を笑ってやろうと思い、いいよ、と答えて教えられたロイの家へ向かった







一方、リザから突然電話で「今エドワード君が報告書を持って大佐の家へ向かいましたんで」と言われたロイは焦った


こんな状態のところをエドワードに見られたら何を言われるか分かったもんじゃない、散々嫌味を言って笑うだろう


それだけはどうしても避けたかったロイは、熱のせいで思うように動かない身体を動かし、パジャマからシャツとズボンに着替え、軽く髪をセットして、2人分のお茶を用意した


すると丁度よくエドワードの来訪を知らせるチャイムが鳴ったので、玄関へ向かおうとしたロイは軽い目眩に襲われる


フラッ――‥


「ッ…ゴホッ…ゴホッ…ちょっと無理をしすぎたか、熱が上がってきたみたいだ」
 
 
自分の額に手を当てるとさっきより熱く、息も苦しい


しかし玄関の前まで来ているエドワードを放っておく訳にもいかず、ロイは玄関の扉を開けた


「やあ、鋼の」


平然とそう言ってやれば、待ってましたとばかりに意地の悪い笑みを浮かべて聞いてくる


「大佐、風邪引いたんだってー??」
 
 
その態度に少しイラッとしてロイも言い返す


「ああ、君は“アレ”だから風邪を引かないのか」


エドワードはロイの言いたいことに気付くと「誰がバカだって!?」と怒りだす


「おや?私はアレと言っただけで“バカ”とは一言も言ってないが?」


「っ!!」


悔しそうに自分を睨み付けるエドワードに思わず笑いがこぼれそうになる


「立ち話もなんだから上がっていくと良い、お茶でも出そう」


エドワードは一瞬迷ったが思ったよりロイの具合が良さそうなのと、何よりロイの家を見てみたいという好奇心から中に上がることにした


「ところで大佐、これからどっか行くのか?」


いきなりの質問に訳が分からぬままロイは答える


「いや、何処にも行かないが、どうしてそんな事を聞く?」
 
 
「じゃあ何でちゃんとした服着てんだよ、普通具合悪くて寝てたんならパジャマとかじゃねぇのか?」


エドワードのもっともな問いに苦笑する


「それはそうだが…まさか客人をパジャマ姿で迎える訳にはいかないだろう」


そういうものなのか?と不思議がっているエドワードを置いてロイはキッチンでお茶の用意をする


平気そうにはしているが、実のところ、今のロイは熱もだいぶ高くなってきており、寒気や目目眩などで立っているのがやっとの状態だった


しかし、エドワードが帰るまでは、となんとか気力で耐えていたのだ
 
 
エドワードに渡された報告書も目は通しているが、視界がぼやけて何が書いてあるのか分からず、エドワードの報告もよく聞き取れない





次の瞬間――…





「大佐!!」


ロイの身体が傾いた


エドワードは倒れる寸前でなんとか受け止めるが、その身体は熱く、ロイの熱の高さを表していた
 
 
「――ッ…馬鹿野郎!!ひどい熱じゃねぇか、何で黙ってたんだよ!」


ロイはエドワードの大声に頭を押さえる


「鋼の…もう少し、静かにしてくれないか…ハァハァ…それに…上官に向かって馬鹿野郎とはなんだ…ッ」


エドワードは目の前で苦しそうにしているロイの姿を見て、そのことを言わないロイにも腹が立ったが、それに気付けなかった自分にもっと腹が立った


「とにかくベッドまで運ぶぞ」


そう言ってエドワードはロイを支え一歩ずつ歩くが、その小さな身体で大の大人を支えるのは想像以上に大変で、ベッドまで運ぶのに30分近くかかってしまった


ロイをベッドに横にならせるとしばらくして静かな寝息が聞こえてきた


エドワードは飲み水、洗面器、タオルなど必要な物を用意してロイの寝ている部屋に戻る


寝ているロイの額に手を当てるとかなり熱く、相当無理をしていたことが分かる


寒くないよう布団を被せてやり濡らしたタオルを額に当てるがそれも10分としないうちに取り替えなければならないぐらいだった


それでも5、6回取り替える頃には熱も少し落ち着いたみたいだ



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