雪割り桜の散る頃に

□水葬
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船内の一角に、山崎さんを看護する部屋が設けられた。


山崎さんの症状は芳しくなく、高熱にうなされているほど重い。


千鶴殿と交代で山崎さんの看病をしているが、一向に良くならない症状は私たちを気落ちさせた。


「山崎さん、助かるんでしょうか……」


こればかりは私にもわからない。

きっと大丈夫。そう願うが、私は千鶴殿に答えることはできなかった。



ここで千鶴殿を励ますのが私の役目だというのに、なんという不甲斐なさ……。



「そろそろ、山崎さんの様子を見に行ってくる」


「はい……」


千鶴殿に後を任せ、甲板を後にし山崎さんの部屋に向かった。


今も山崎さんは熱に苦しんでいる。


私には、何もできない……私はなんと無力なのだろう。



薬を飲ませることしかできないのか……。



「雪…村く…ん」


「山崎さん、無理はしないでください。今薬を……」





「副…ちょ…うを…、呼ん……で……」


「はい、では副長をお呼びしたら薬を飲みましょう」


私の返事を確認すると、山崎さんは力なく微笑んだ。


それが、私が見た山崎さんの最期だった──。



**********************


帰らぬ人となった山崎さんは、船上にて水葬されることとなった。





柚季さんが土方さんを連れて部屋に入ったとき、山崎さんは既に息絶えていた。


そのあとの柚季さんは、見ていられないほどだった。



泣き叫び、これがあの冷静沈着な柚季さんなのか、と思わせるほどで。


それを見ていたみんなは居た堪れない表情だった。





山崎さんの水葬式のとき、柚季さんは部屋から出てこなかった。


ずっとすすり泣く声が響いていて、それは柚季さんが山崎さんの死を受け止めきれていないという、何よりの証だった。


監察の仕事も手伝っていた柚季さん。


誰よりも山崎さんのことを、兄分と慕っていた。


そんな山崎さんを助けることもできず、柚季さんの無念は計り知れない。




山崎さんはずっと新選組のために奔走してくれた。


諜報活動、密偵。


監察として、新選組に多大な貢献をしてきた、いわば新選組の恩人。


私ももちろん、たくさんお世話になった。


池田屋のとき、二条城のとき、思い起こせば、きりがないくらい。



そんな山崎さんの死を悼む人はたくさんいて、彼はみんなに愛されていたのだと思う。



近藤さんも涙を流して悔しがっていた。


土方さんは今にも泣きそうになるのをぐっと堪えていた。


原田さん、永倉さん、平助くんは三人揃って黙とうしていた。


斎藤さんは沖田さんの肩を抱いて、沖田さんは斎藤さんに支えられて山崎さんを見送った。




山崎さん、今までありがとうございました。


ずっと戦いの日々だったけど、これからはどうか安らかに眠ってください。
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