ヒルセナ放課後5題

□アイシールド21として
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「ショルダーパッドとグローブ、それに、テーピング?」
瀬那は買出し用のメモを読み上げながら、声が裏返る。
リズミカルに弾んでいた小走りの足も止まった。

瀬那は学校近くのスポーツ用品店「キミドリスポーツ」に向かっていた。
表向きアメフト部の主務である瀬那は必要な道具を買出しに来ていた。
楽しい気分の瀬那はついつい小走りになる。
部活のための買い物というささいな雑用が楽しい。
自分には無縁だと思っていた高校生活が、面白くて仕方ないのだ。

だが道すがら「買って来い」と蛭魔に渡されたメモを開いた瀬那は唖然とした。
実際にプレーする部員は、全員魔物なのだ。
普通の人間と全力でぶつかったところで、何ともない。
つまり防具なんて無意味だ。
それでもルール上で着用が必要なものならまだしも、テーピングとは。
いくらそれっぽくするにしても、学校の経費の無駄遣いではなかろうか?

それでも次の瞬間、瀬那は頬を緩ませた。
とことん凝り性な蛭魔らしい徹底振りが可笑しい。
それに瀬那に少しでも楽しい高校生活を送らせようとしてくれているのがわかるのだ。

だが楽しい気分は一瞬で消えた。
背後から不穏な気配を感じたからだ。
あからさまな敵意が、瀬那をピタリと狙っている。

さてどうしよう。
相手は瀬那をどうするつもりか、何人いるのか。
瀬那は靴紐を結ぶ振りをしながら、懸命に考えを巡らせていた。
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