サディスト5題

□縋りつくその指
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律、お前が選べ。
高野はそう言うと、じっと律を見つめながら答えを待った。

知り合いのクリニックに預けた律を迎えに来た高野は、呆然とした。
律は何も身に纏わない姿で、ベットに沈んでいたからだ。
毛布すらかけられておらず、華奢な裸身は無防備に晒されている。
高野自身がつけてしまった傷や鬱血も多いが、それ以外にも痕が増えていた。

律はここに連れて来た時以上につらそうな状態で、肩で荒い呼吸をしている。
おそらく熱も上がっているようで、いつもは白い肌は紅潮して、バラ色に染まっていた。
高野がドアを開け閉めした音にも目を開けないのは、意識が飛んでいるからだろう。

正直言って、この可能性を考えないわけではなかった。
だが律を医者に診せた方がいいと思ったものの、まともな病院には行けない。
この状態では、どうしても暴行を受けたと思われてしまい、警察沙汰になる。
散々考えた末に長谷川のクリニックに来たのだ。
金さえ積めば少々の不審は目を瞑ってくれる。
それに女遊びの噂が多い長谷川が、いくら美しいとはいえ男に興味を示すとは思わなかった。

嫌な予感がしたのは、長谷川という男はどこか底知れない不気味さがあるからだ。
点滴の間、どうするかと問われて一瞬迷った。
それでも律を置いていったのは、どうしても今日中にしなければいけない仕事があったからだ。
点滴の間に片付けて、今日はもうずっと律の看病をする。
ガラにもなくそんな優しい気分になった結果がこれだった。
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