『あっつーいっ!』



勢いよく上着を投げ捨てる彼女に思わずため息をついた。
しかし彼女はそんな私には気付かず上着を床に放ったまま、ぱたぱたと台所までかけていった。
私は彼女の上着を持ち上げ、リビングの椅子の背もたれにそれをかけた。
シャツのボタン2、3個開けたところで彼女がアイスを持って寄ってきた。



『はい!おいしいよー。』
「ありがとう。」



笑顔で渡してくるため私は小さく笑ってそれを受け取った。
彼女はソファーに腰掛けると私に話しかけた。



『窓開けてよ、ロイ。』
「あのなぁ・・・」
『んー?』



私が文句を言おうとすれば、彼女はアイスをくわえながら私を見上げた。
私の開けた口はただため息が出ただけだった。
窓を開ければ幾分か室内に風が流れて涼しくなった。
私も彼女の横に腰掛け溶けかけたアイスを口にくわえた。



『んー疲れたぁ。』
「こら、重いぞ。」
『彼女にむかって重いとはなんだ。』
「体重をかけられたら重いだろ。」



彼女は唸りながら私を背もたれにし、肘掛けに両足を放り出した。
スカートから覗く彼女の白い脚が視界の端にちらつく。



「脚が見えてる。はしたないぞ。」
『やだぁロイ君の変態ー。』
「・・・・・」



彼女はふざけたように私を見上げた。
私はため息をひとつして口を開いた。



「まったくこんな君を見たら職場の連中は驚くだろうな。」
『うるさいなぁ。』
「職場では私に絶対服従の君がこれじゃあね。」
『もう!なによ!』



彼女は起き上がり私の手から食べかけのアイスを奪い、いつの間にか食べ終えた自分のアイスの棒を私に押し付けた。



「私にこの棒をどうしろと?」
『等価交換。』
「こんなデタラメな等価交換があってたまるか。」



彼女は私の言葉など耳に入れず、再び同じ格好に戻りアイスをくわえた。
素早く食べ終えると棒をまた私の手中に押し付けた。



『・・・ん、涼しくなってきた。』
「アイスを食べれば多少なりともな。私は暑いぞ。」
『棒あげたじゃん。』
「だからなんだ。」



こんなんで涼しくなる方法があるなら教えてほしいものだ。



「お腹壊すなよ。」
『そしたらロイのせいね。』
「関係ないだろ。」
『ロイのアイスだもん。』



彼女が笑って言うものだから私も笑ってしまった。
参ったな。本当に彼女には弱い。



『さてと。』



ゆっくり起き上がった彼女は私を見つめて聞いてきた。



『夕食何がいー?なんか作るよ。』
「何か冷たいもんがいいな。」
『んじゃ冷製スープパスタにでもするかな。』



私は立ち上がった彼女の腕を掴みそのまま引き寄せた。
彼女は私の腕の中にすっぽり収まった。



『な、なに!?』
「まだ火のそばに立つのは暑い時間帯だろ。」
『そりゃそうだけど・・・んんっ!』



彼女が振り返り見上げてきたところで口を塞いだ。
彼女の手が私のシャツを引っ張るがそんなの関係ない。
彼女の力が抜けたのを見計らって離れた。
息の上がった彼女の頬は赤く、瞳も濡れていた。



『・・・暑い。』
「溶けちゃいそう?」



意地悪く笑って聞けば彼女は眉をつり上げ不服そうに応えた。



『もう!トロトロに溶けちゃうわよ!』
「そりゃいい。」
『どこがいいのよ!』



不満そうな彼女の耳元でそっと囁いてやった。



「溶けて一緒になってしまおう。」
『っ!』



彼女のはだけたスカートから見える脚に手を這わせば、思い切り頬をひっぱたかれた。















─────
最近キッチンに立つと暑いです。野菜切ってるだけなのに暑い。
夏って恐ろしい←


ありがとうございます。
よろしかったらご感想などお願いします。



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ