絶対零度の神原ユクエ
□第一章
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――目の前に、身の丈ほどの大刀を持った少女が現れた。
「はぁぁあぁっ!!!!」
そして雄たけびと共に、その大刀を振り下ろす。
・・・俺に向かって。
「おわあぁぁぁあっ!!!!!!!」
ドガッ
大刀は俺のすぐ脇に刺さり、一命は取り留めた・・・って・・・こいつ、いきなりなんなんだっ!?
少女は一瞬険しい顔をしたが、すぐに元の表情・・・殺気に溢れた顔に戻った。
・・よく見るとかわいいな、こいつ。
柿色の髪はショートで、前髪の一部(後れ毛っていうのか?)だけ長く伸びていた。
不思議な髪型だ。
身にまとっているのはよく見るセーラータイプの制服。
やや短めのスカートからのびる、細長い脚は黒タイツをまとい、何やら不似合いな機械的なブーツを履いていた。
少女はビシッと俺に人差し指を向けてくる。
そして、大声で叫んだ。
「標的番号(ターゲットナンバー)00001一桁化物(シングルモンスター)、刀剣型(ソーディアタイプ)『絶望の狂神(クレイジー)』ッ!!!!あんたを狩りに来たんだからっ!!!」
は・・・・。
何いってんだろう、この子は。
しかも少々早口でまったくといっていいほど聞き取れなかったんだが…。
俺があまりにもぽけーっとした顔で見るもんだから、少女は戸惑ったらしく、少し悲しそうな顔をする。
「あ、あの〜『絶望の狂神』だよね・・?」
んなこといわれても。
「俺は普通の高校生だが」
俺は平常心を保ちながら言う。
そう答えると少女はあたふたし始めた。
「あ、あれれれれえれ・・・・人間違いぃぃぃい・・・・」
涙目でさっきの威勢はどこへやら、大刀をひしっと抱きしめながらくるくる回り始めた。俺は今のうちにと、立ち上がった。
え?ふつうそこは大丈夫か?だって?
別にいいだろ、被害者なんだから。
「でも確かに気配感じたのに・・・。おっかしいな・・・・・・・あぁもう!久々の大物だと思ったのにっ!!!」
少女は悔しそうに地面を踏みならした。
「あたしの馬鹿馬鹿馬鹿っ!!!部外者に手をだすなんてっ!」
バソッ・・と頭を抱え、座り込んでしまった。
・・・と思ったら、いきなり俺に背を向けて走り去った。謝罪もなしに。
「なんなんだよ、全く・・・」
チーター並の速さで駈けてく少女を俺はしばらく眺めていた。