-短編-

□波止場での出会い
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−カツンッ

私の手から滑り落ちたフォークの音が
寂しいほどに静かな部屋に響く。

フォークはひらわれる事なく床にぽつりと

フォークに続いて
涙がテーブルに落ちる。



余り余計な物が置いていない殺風景な部屋に一人の女性の姿がある。

その瞳は 悲しみに満ちた色をしていた。



ある日突然別れを告げられた。
2人は何年も付き合っていた。
だが男は、「他に好きな人が出来たから」
そう告げて、彼女の元から去って行った。


彼女は何を思ってか、上着と鞄を手にし
家から出て行った。

電車やバスに乗り
着いたのは港町の美術館

そこには、余り人が見当たらなくて

白い壁に包まれた空間は
何故かとても居心地の
良い物だった。

その後、近くの波止場に行き海を見つめていた。

「おい、姉ちゃん。
こんな暗いのに何してんだ?」

「……?」

急に後ろから見知らぬ男性に話しかけられた。

振り向くとその男は
眼帯をし、
銀色の髪を靡かせ
優しい笑みを私に向けていた。

「暗いのにこんなとこいてたら危ねーぜ?」

「じゃあ貴方は何故危ない所にいるんです?」

「それを言われちゃあな」

彼はそう困ったように笑った。

彼の名は、長曾我部元親というらしい。

何だかんだ話しが合う



「あんたの事、結構好きだぜ?」


嗚呼、私は貴方の事を
好きになってもいいんですか?


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