NovelT
□10年後の今日の日も
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そんな10年も前の事を思い出して、恥ずかしくなった。
「ふは…なんか、激ダサだぜ」
俺はもう大人だ。
努力が全て実らない事も、物語が全てハッピーエンドで終わらない事も知ってる。
10年前に毎日のように顔を合わせていた奴らとも、連絡とっているメンバーは一部だ。大人ってそんなもんだ。
少しだけ磨り減ったスニーカーで道路を蹴りながら、そんな事を考える。
背負ったリュックの中にあるのはもうラケットじゃない。仕事道具のPCや何やらだ。連休は嬉しいがその前後は忙しくなる。家に仕事をもって帰る事だって少なくない。
嫌な事や辛い事もたくさんある。
10年で色んなことが変わった。
こうなるなんて10年前の俺には全く想像がつかなかった。
まだ暑い日は続いてるが、今日は夏のまとわりつくような風ではなくて少し冷たい秋の風が吹いているからか、変に感傷的になっているのかもしれない。
「……はー、オッサンかよ」
夏から秋に、そして昼から夜に切り替わる。この瞬間は嫌いじゃない。
街灯の灯りがつき始めて、それに目を奪われた一瞬、肩を叩かれた。