BOOK2

□まだ檻の中
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最近忘れてしまっていたけど俺には昔から秘密にしてる事がある。母さんにも、友達にも言った事がない。
彼女をつくらないのも、恋をしないのもそのせいだ。

小さい時、友達と仲良くすると良く父さんに怒られた。
どうしてか分からないけど、父さんは俺が友達と仲良くするのを嫌がってたのを覚えてる。

「バン、来なさい」

「…はい」

友達と遊んで門限を破ってしまった事があった。
やっぱり父さんは怒ってて、
説教覚悟で俺は父さんの部屋に入った。

「バン、何で約束を守らない」

父さんは机に座りながら言った。いつも以上に怒ってる気がするのは気のせいか。

「どうして父さんは俺が友達と遊ぶと怒るの?」

今思えば聞いてはいけない事だったのだと思う。
でもまだ幼かった俺は、ただ純粋に疑問に思ってたんだ。

「バン…」

父さんが何かを堪える様に俺を呼んで、
傍に近づくと父さんに抱きしめられた。

「父さん?」

「息子に対してこんな気持ちになるなんてな」

そう言った父さんは、いつもの優しい父さんじゃなかった。


*


「…バーン!!」

遠くから聞こえる仲間の声。
嬉しくなって振り返る。
見馴れた顔が笑いながらこちらに走ってきた。

「カズ…こんな所で何してるの?」

そう聞けば、近くでLBXのイベントがやってるらしい。
一緒に来ないか、と聞かれて一瞬迷う。

「あ…えーと、悪いけど俺行かない」

最近思い出した父さんとの約束。あんまり友達と仲良くするなよ、と。
どうして父さんが死んだ今でもこんな約束を守ろうとするのか分からないけど小さい時に刻まれた記憶がそうさせるのかもしれない。

「何だよつれないなー。」

何て言いながらカズは何処かへ行ってしまった。
本当は仲良くしたいよ。
でももう今はそんな気分じゃない。
父さんとの約束何て思い出さなければ良かったのかも。

「……はぁ」

とぼとぼ家に帰る。
帰宅すると、母さんは買い物に行ってるのか家には誰もいなかった。

自分の部屋に戻っていつもと同じく鞄を机の上に置いた。

「…………はぁ」


本日2回目の溜め息をはいてベッドの上に寝転んだ。
ギシッと音がして、それでまた父さんの事を思い出した。

「…バ、ンッ」

ギシッて嫌な位音が鳴るベッド。目の前に俺より遥かに大きな父さんがいて…、今考えればそんな行為は親子でやる事じゃない。ましてや男同士で…
でも俺を呼ぶ父さんの声が心を締め付けた。まだあの時俺は小さかったから、父さんが何であんな事をしたのかわからなかった。
痛くて痛くてよく泣いていたのを覚えてる。
でもそれが終わった後はいつもみたいな優しい父さんに戻って一緒にLBXをやってくれた。


「……父、さんっ」

そんな事を思い出したら胸がいっぱいになって哀しくなった。
父さんの事でもどかしくなる身体に、身体は正直だなぁと更に皮肉な気持ちになる。


「はぁ…あっ」

衝動を抑えるために馴れた手つきで自慰している自分にどうしようもなく嫌悪感が芽生えてくる。

「………あっ…ん」


早くこんな事やめて、

全部忘れたいよ。


まだ俺は檻の中――…。




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