BOOK1

□彼なら良かった
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「お前が好きだ!!!」



それは血みたいに真っ赤に染まる夕方の頃だった。

俺は夕日の赤を血なんて思った事なんてないし、
むしろ熱血や愛とかの熱い色だとか思ってる。

俺は赤い色が好きだ。



それは、好きな人のイメージカラーだからだろうか。

一目惚れで好きで好きで堪らなくて、我慢出来なくて。
これが恋なんだと気づくと、
彼に伝えたくなってしまった。
だから、彼が学校から帰る道に待ち伏せして告白した。


ドキドキした。
不安なんてなかった。

好きだから。

フラれる何て事、考えてなかった。勿論相手の性格だって良く知らないままだった。

男が男に告白するのは“変”
何て言う一般常識なんて
考えてなかった。



「…サッカーのやり過ぎで頭がイカれたか?クズ」


だから、
この時言われた言葉が凄く悲しくて重かった。

好きだから、
伝わると思った。

サッカーと同じだと思った。



だけど違った。

返された言葉は冷たくて、

世間ではこんなの序の口だと言うかもしれない。
でも俺はそんな冷たい言葉遣いになれてないし、仲間がかけてくれる言葉は例え悪口でもまだ温かみがあった。


「…何で…ダメなんだよ。」

返す言葉はそれしかなかった。
ごめんなさい何て謝りたくなかった。

好きなのに、何でわかってくれないんだよ。

「お前の脳みそは大分腐っていると見える。俺は男だぞ、男のお前何て相手にする訳が無いだろう…。」

「好きなんだよ!!何でダメなんだ!」

「…わからないのか…?そんなのはただの我が儘か病気だ。精神科の病院に行く事をススめてやる。」


腕組みをして冷たく睨む瞳。
それは試合をした時より鋭くて、まるで俺何か人間に見てる様な瞳じゃなかった。


「…何で…だよ。」

熱い雫がいっぱいいっぱい
目に溜まった。

馬鹿みたいだ。


「欝とおしい、俺の前から今すぐ消えるんだな…クズ。」


すたすたと歩いていく
鬼道有人の姿。



その姿と冷たい言葉が
胸に突き刺さった。


胸の痛みと頭は真っ白だった。



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