BOOK1

□発火熱度
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「……たくっガゼルの奴。
ムカつくんだよ…」


いつもの様にサッカーの練習を終え、
シャワーを浴びに、廊下をあるく。

それはいつもと変わらないのだが…練習は違った。

今日はグランがいない。


そのお陰でガゼルが調子づき、ファウルプレーばかりしてきたのだ。
生憎プロミネンスは8対5で練習試合に負けた。


今日は何だか調子が悪い。
たかがファウルプレーだけでこんなに点差がつくなんて。

いつもなら、ファウルプレーだろうがなんだろうが関係無く勝てるのに…。


「あぁっ…クソっ。」


無性にイライラする。


ガンッと壁に八つ当たりした。


「覚えてろ…ガゼル。」


勝つのは俺だ。



脱衣所でユニフォームを脱いでいる時だ、

フッ…と思う。


“何故、今日はグランは来なかったんだ”


アイツの事だ、また一人でぶらぶらと雷門イレブンの様子を見ているんだろう。
何故、勝手な事ばかりするアイツが父さんに気に入られているのか理解不能だ。

クソ…………、
ガゼルの悪口が浮かんだ。
“そんな事もわからないのか、単細胞チューリップ…”


「うっせぇ、頑固氷魔人…。」


鏡に向かって悪口を言えば、
少しだけ自分が惨めに思えた。

グランが雷門イレブンの様子を見に行く理由。
それはきっと、

“お気に入り”

がいるからだ。


「…円堂守か……。」

初めて話したのは、円堂が沖縄に来た時だ。

真っ直ぐなブラウン、だけど…何処かとろんと甘い。
折れてしまいそうな腕、小さな手。あんなんで本当にGKが務まっているのだから凄い。

馬鹿で正直で、真っ直ぐで熱くて…。

(俺はヒロトが好きだぜ…)


馬鹿正直過ぎだ。

(ヒロト…凄く優しいんだ)


(ヒロト…行くなよっ)



(((ヒロト…)))


「馬鹿馬鹿しい。」

こんな思いになるなんて。

これじゃあ
ガゼルに単細胞と言われたって仕方ないじゃないか。

「なんで俺じゃないんだ…」


いつもグランばかり。


なんで皆グランの名前しか呼ばない。
俺の努力は何なんだ。


「円堂…。」



ああ…馬鹿馬鹿しいっ!!

マイナス思考を振り払い、
俺はシャワー室に向かった。



「皆死んじまえっ!!」


悔しいから叫んでやった。


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