訓練部屋。
□扉の向こうの勘違い
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今朝、スペイン宅には切っても切れない縁の悪友こと、フランスとプロイセンが遊びにきていた
昔から自分をなにかと追いかけ回していたフランスや、弟をたぶらかすじゃがいも野郎の兄なんか嫌いだ。
そう思って、玄関先を横切る二人と、家の中を案内するスペインを、リビングから遠目で黙って見ていた。
スペインの部屋に行くには、廊下を通って二階に続く階段をのぼらなくてはならない。
ちょうどその廊下を通るときに、スペインがリビングを覗くように、扉の間からひょこっと顔を出した。
早く行けよ…
スペインの後ろにいるフランスとプロイセンは、急に立ち止まったスペインを不思議そうに見ていた。
ニコニコと笑顔をこちらに向けながらスペインは手招きした。
「ロマーノ〜、ロマーノも一緒に」
「却下。」
嫌な予感がした俺は、即答した
「…ちょ、まだ最後まで言うてへんやん!!」
「どうせお前のことだから、『ロマーノも一緒に遊ばん?』とか言うんだろーが」
「さっすがロマーノ、分かってるんなら話は早いやん!行こ、なぁ俺の部屋行こうや〜」
「い や だ!
なんで俺があの髭野郎とことり野郎なんかと馴れ合わなきゃならねーんだよ。」
「えー…」
「えー、じゃない。とにかく、俺は絶対嫌だからな!」
と言ってスペインと別れてから、もう二時間は経つ
自分から突き放したとはいえ、こう…広い家の中に一人でいるのは、心細い…というか正直寂しい。
昔この身体が小さく、まだ幼かったころ。
スペインの広すぎる屋敷の勝手がわからず、よく迷子になっては泣きべそをかいていた。
あのときの不安や、孤独感、心細さを、つい今の自分の状況と重ねてみてしまう。
(…………帰るかな)
ふとロマーノの頭に、そんな考えがよぎった。
帰ってしまえば、こんな孤独感に苛まれることはない。
それにもう、スペインからは独立して、自分には帰る家が他にある。
別に昔のようにスペインの家で生活する必要はないのだ。
ただ、いっしょにいた時間が長かったためそれが当たり前のようになってしまっただけで。
入り浸る習慣がいつの間にか付いていてしまって、全く恐ろしい。
帰ると決まれば行動は早い。
ロマーノは、二時間も邪険にし絶対に近付こうともしなかったスペインの部屋に、帰りの旨を伝えるため足を運んだ。