訓練部屋。
□次に会うときは戦場で
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「スペイン兄ちゃんってさ、ずるいよね。
俺の兄ちゃんを何百年も手元に縛り付けておいたくせに、今もまだ縛り付けようとしてさぁ。
せっかく独立して、俺と1つになれたのに。
悪いんだけど、兄ちゃんを追いかけ回すのやめてくれない?
いい迷惑なんだけど」
ある日の午後、
スペインはイタリアの家に招かれた
二人だけで話したいことがある、と言われて来てみれば、開口一番これだ。
いきなりこんなことを言われたら、誰だってムッとするだろう
しかし、言われた側のスペインは、そう言われるのを予測していたのか
特に苛立ちを顔に出すことはせず、いつもの陽気な笑顔とはかけ離れた無表情で、その言葉を切り捨てた。
「縛り付けるとか人聞きの悪いこと言わんでくれる?
ロマーノは自分の意思で俺の傍に居てくれたんやけど。
自分がロマーノから愛されないからって、醜い嫉妬はやめてくれへん?
見苦しいわ」
その言葉を聞いて、イタリアは思い切りテーブルを殴った
ダンッ!という大きな音と共に、ふざけんなよ、と反抗的な返事が返ってくる
「愛されてないのはスペイン兄ちゃんの方でしょ?
じゃなきゃ、兄ちゃんが俺と1つになるなんて言ってくるわけないじゃない」
「ウソ言うなや。統一しよ最初に誘ったんお前やろ、ロマーノめっちゃしぶってたで。
あと“1つになる”って言い回しやめてや、なんかムカつくわ」
「そっちこそウソつかないでよ、兄ちゃんてば独立する前は毎日『スペインがうっとうしい』って俺に電話してきてたんだから。」
その言葉を聞いて、スペインはふん、と鼻で笑った。
言い争いは更に激しくなるばかり。
「イタちゃん知らんの?
ロマーノの『うっとうしい』は照れ隠しなんやで?
兄弟のくせにそんなことも知らへんの〜?」
スペインはわざと、嫌味ったらしくイタリアの怒りを煽る
その挑発にカチンときたイタリアは、負けじと言い返す
「えー?兄ちゃん本気で嫌そうだったけど?
兄ちゃんからしたら、スペイン兄ちゃんって邪魔者だったんじゃない?
空気読めないし、鈍感だし、うっとうしいし、貧乏だし甲斐性ないし。
うっわ全てにおいてダメダメだね、もう救いようがないよ。生きてても意味ないんじゃない?」
「安心しぃや、俺イタちゃんほどヘタレやないし、甲斐性あるし。お前にだけはダメダメ言われたないわ。
つかその腹黒さロマーノにも見せてやりたいわぁ、これが弟の素なんやって知ったら、絶対ロマーノ俺んとこに戻ってくんで。その性格の悪さのほうが救いようないんちゃう?」
「あはは、何いってんのスペイン兄ちゃん?
兄ちゃんがスペイン兄ちゃんちに戻るなんて、そんなことあるわけないでしょ?
よくそんな前向きなこと考えられるよね、そのポジティブ精神感心しちゃう。
スペイン兄ちゃん気付いてないみたいだから言うけど。
兄ちゃんからしたら、スペイン兄ちゃんは独立するのにちょうど良い“踏み台”だったんだよ
兄ちゃんに利用されたの、知ってた?
南イタリアの経済とかが安定して、蓄えができていつでも俺と一緒になれる準備が整うまで、兄ちゃんは仕方なくスペイン兄ちゃんのもとで暮らしてただけ。」
仕方なく、の部分をやけに強調させて発音し、イタリアはにやにやと笑みを浮かべた
「利用されてくれてありがとうね?
まあ、その能天気でおめでたい頭じゃ、そんなことないとか言い張りそうだけど」
「当たり前やん、俺がロマーノを利用することがあっても、ロマーノが俺を利用するなんて有り得へんわ。ロマーノはイタちゃんと違って心が綺麗なんですー、まあ俺が育てたんやから当たり前やけど?」
「育てたぁ?洗脳の間違いでしょ?
今まではうまく俺の兄ちゃんを騙していらないこと教えてこれたみたいだけど、これからはそうはいかないからね
もう絶対にスペイン兄ちゃんには兄ちゃんを会わせない」
「それこそロマーノを縛り付けてるやん、ロマーノが好きなんやったらロマーノの意思尊重してあげるべきちゃうの?
ロマーノが俺に会いたくなるのは確実やで」
「は?自惚れないでよ
そんなの兄ちゃんの意思を聞くまでもないね、兄ちゃんはずっと俺と一緒に居てくれるんだから。」
「へー、そうなん
まあか弱いイタちゃんに何ができんのか見物やな。せいぜい頑張れや。
ちなみにロマーノに会わせない言うても、奪いに行くから無駄やで。」
「来なくていいって言ってるでしょ?ほんとしつこいね。
あー、あと確かに俺だけじゃなにも出来ないかもしれないけど、俺にはドイツと日本がいることを忘れないでね。二人にスペイン兄ちゃんのあることないこと吹き込んで、スペイン兄ちゃんを潰させることだって俺には出来るんだよ。」
「アホやなぁイタちゃん、たかが二人で本気出した俺に勝てるとでも思うてるん?
情熱の国なめんなや」
「は、沈んだ太陽のくせによく言うよ。負け犬。
死に損ないには内職がお似合いだよ?」
「ほんならもっかい太陽昇らせたろか?
熱くて焼け死ぬかもなぁ、イタちゃん。楽しみやわ。」
「そう?俺も楽しみだなぁ、スペイン兄ちゃんを立ち直れないくらいボコボコにするの」
ふふ、とイタリアは笑い
スペインは冷笑を浮かべた
話は終わったのか、二人は同時に席を立つ
声を揃えて二人は言った
『それじゃ、次に会うときは戦場で。』
end.