訓練部屋。
□矛盾
1ページ/5ページ
3月も終わり、今日から新しい月になった
前月に比べ、日に日に暖かくなっていく
花も開花しはじめて、とてもいい天気だ
それなのに、イタリアの心は晴れないでいた
今朝ドイツから一本の電話があったのだ
『イタリアか?
聞いてくれ、兄さんが戻ってきたんだ、生き返ったんだ!
いまは俺の焼いたホットケーキを食べていてな、それから―……』
そういった内容の話を10分ほど延々と一方的に話された
ドイツの声音が弾むのに対し、自分の気分は更に沈んでいった
(どうして…?)
何故、どうして…
国であるプロイセンが、蘇るなんてことはまずあり得ない
イタリアは今までに、他の国に吸収されたり、統一されたりして消えていった国を幾度かこの目で見てきた。
しかし、その内のだれもが、誰一人として復活を果たしたなどと言う例は、見たことも聞いたこともない
プロイセンは消滅したはずではなかったのか?
生き返ったというのなら、なぜ生き返ったのだろう?
(…………せっかく、居なくなったと思ったのに)
ドイツには悪いが、プロイセンが居なくなったときイタリアは心の中でひそかに喜んでいた
プロイセンがいるからドイツは俺に構ってくれない、プロイセンが俺とドイツの時間の邪魔をする。それならば。
プロイセンは消えればいい。
それはとても幼くて身勝手で、独りよがりな汚ない考えだったけど、その時のイタリアにはそれがとても正しいことのように思えた。
そしてその願望が叶い、プロイセンが消え去ったとき、イタリアは安堵した。でもそれもほんの束の間。
物事の展開は思い通りには行かず。イタリアは現実を目の当たりにした。
消えたのに、死んだのに、居なくなったのに、亡くなったのに、滅んだのに、それなのに。
彼の心を占め、彼の心を縛り、彼のすべてを持っていくプロイセンが憎い。