小説
□ただ、
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兄はあの有名な帝愛グループの経営するギャンブル店に勤めている。
そして先日店長へと登りつめたらしい。
あの帝愛は店員レベルでも良い線の収入だったのだが、店長となってから急に上がったような気がした。
ただ、金は人を変える。いや、変えた
「これからは我慢しなくていいんだぞ。」
「大丈夫、前から我慢はしてないから」
「そんな事言うなよ。前は金が無くて服も化粧もできなかったんだ。
だが今ならできるんだ、どんどん綺麗になってくれ」
「別に…今更。今のままでいいと思うし」
「なら本や料理に使えばいいじゃないか。お前読書やお菓子作り好きだろ」
「まだ今の本読み終えてないし。それにこないだクッキーたくさん作っちゃって、まだ作らなくていいよ」
「…今読んでる本。1年前から変わってないよな」
「兄さん。自分はあの本好きなの」
「本当は買えなかったんじゃないのか…?」
「ううん、本当に好きなの」
「いくらやりくりしても、学費と生活費と俺の費用に…」
「兄さん。」
「少しくらい贅沢しろよ!」
夕飯が用意されている机を思いっきり叩き食器が揺れた。
「…兄さん」
「もう大丈夫なんだ。以前より増えたんだ。このまま行けば…!」
「兄さん。兄さんが頑張ってくれるのは嬉しいよ。でもいいの。今のままでも」
「何言ってんだ。金があれば新しい本が買える、服も化粧も我慢しなくていいんだぞ?」
「いいの、それでも。元々服も化粧も興味なかったし。本当にこの本は好きなんだ。
いらない。自分は兄さんと一緒にいれれば今のままでいい。少しお金が増えたからって。それは変わらない」
「………っ」
兄はいたたまれない表情だったけど、わかってくれたのか夕飯を食べ始めた。
本当にいらない。
ただ数ヵ月後
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本を買わないのは本当にその本が好きだから
店長がそんな貧困なワケない。
数ヵ月後 続きそう