Haven's door

□〜其ノ弍〜
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「水・地・火・風の精霊達よ、我に応えよ。我が力となりて我に従え。」
俺が精霊に呼び掛けすると、光りが俺の身体を包み、一つ一つの光りが精霊の姿となり現れる。
「地に属する癒しの精霊よ、汝、鬼女の怒りを鎮めたまえ。」
光りの一部が鬼女となった魂の周りに集まる。
『な、なんだ…これは!キサマ!私に何をした!』
「何も…。ただ、邪を払って貴女の寂しい心を癒すだけ…。」
『寂しい…?私が寂しい心の持ち主と?』
「そう。だから癒してあげる。」
彼女の周りに集まった精霊達の光が増してくる。
『や、止めろ…止めてくれ!私は、寂しくなんかない!癒される必要など無い!私は、私は、ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙……!』
消える瞬間に頭を抱えもがき苦しむかのような声を上げ魂が、無理矢理除霊されたかの様に昇天していく。
−これでよかったのかな…?−
気付くと空は真っ暗になり、無数の星が輝いていた。
「よっこい…しょっと。」
精霊を使うと楽に除霊出来る半面、中性の身体は思う様に動かないのが難点でもある。
「晴明、お疲れ。今回、わりと時間掛かってない?」
屋上の出入口で待ちくたびれた博正が話し掛けてくる。
「そ、そんな事無い…。」
博正の顔が一瞬キョトンとする。
「せ…晴明、声が…つうか、体つきも!お前…、実は女だったのかぁあ!?」
「違っ…元々は男だ!」
「も、元々はって手術したのか!?あ…でも、確かに柵の前で別れる前までは男だったよな?え?お前、いったいどっち??」
すっかり混乱しきっている。
「説明は、帰ってからするよ。」
俺は溜息をつきつつ、博正と寮に帰った。

−寮、自室−

「で、晴明、お前はどっちなんだ?」
無言で部屋に帰るなり、尋問的質問を受ける。
「精霊使いは、女の人が得意とするのだが、俺は幼い頃からちょっと特殊で精霊を使う事ができる。男の俺が精霊を使う代償として、中性…男でも女でも無い身体になる。今の俺は、メノダだ。男でも女でも無い。精霊を使い除霊した場合、数週間…最低一週間はこのままだ。ちなみに、回復期間にもし、精霊の力を使うとその分だけこの身体で居る期間が長くなる。」
冷静に説明も踏まえて答えると、博正は顔を赤くして言った。
「お、男でも女でも無いって…、む、む…胸が…。」
「あぁ、これ…サラシ巻いてりゃ関係ないだろ。それに、上は女だが下は男だ。便所には、困らん。今まで通りだ。」
淡々と答える俺とは逆にすっかりパニック状態の博正。
「さ、サラシを巻くっていつ巻くんだ?お、俺の前で巻くなよ!」
「当たり前だ!変な意識すんじゃねぇ!」

「そ、そうか…。じ、じゃあ、俺…、風呂行ってくらぁ…。」
顔を赤くしたまま、そういうと『アハハハハ』と、乾いた笑いをし、そのまま共同風呂へと急ぐ博正だった。
「風に属する精霊よ、あの者に冷静さを与えたまえ…。」
素足で出ようとする博正に気付かれない様に、精霊を使ったのは言うまでもない。


手紙(5)
前略
姉さん、お元気ですか?
高等部に進学して一度目の除霊は精霊を使って行いました。正直、後悔しました(汗)
声変わり前までは違和感を感じませんでしたが、今となっては、声だけで無く体つきまで変わってしまうので、精霊を使う事を辞めようかと思います。
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