Haven's door

□〜其の壱〜
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「こんにちは。6年生?」
女の子は頷き、質問を返してくる。
「お兄ちゃん、お母さんのお友達?」
「このお兄ちゃんは、お母さんのお客さん。明、お部屋で宿題してらっしゃい。」
答えようとした時、明子さんは娘を2階へ追いやった。
「父と母は、元気かしら?」
−この人、両親の事知らないんだ…。−
「亡くなりました。」
「そう…。」
しばらくまた沈黙が続いた。
「…それじゃあ、僕は失礼します。コーヒー、ごちそうさまでした。」
立ち上がると、おばさんは俺を止めた。
「手紙に…手紙に、通学変更届けが同封されていたわ。あなた、ここから通わない?」
おばさんは封筒から通学変更を出した。
「おばさん…、一緒に事務所に行ってあげるから…ネ。」
「それは、清姫姉さんへの償いですか?」
俺が、『清姫』を強調してそう言うと、おばさんは青ざめた。図星のようだ…。
「そんな必要ありませんよ。僕は、寮に入りますから。第一、神の子が居たら、あなたの気が休まる時が無いでしょう?生活費の心配もせず、今まで通りの生活を送って下さい。ただし、こちらに姉から連絡があった場合、姉には寮に入った事を内密にしてください。」
俺は、おばさんから通学変更届けを貰うと家を後にした。
俺は、姉さんの言葉を思い出し、目を閉じ耳を澄ませた。
すると遠くから風に乗り、自分と同じくらいの歳の奴等が騒いでいる声や、ブラスバンドの楽器の音が聞こえてきた。
−これを辿れば着くかな?−
音はさらに大きくなり、目の前にパンフレットで見た『学校』が見えた。門のところには、警備員が立っている。
「すみません、通学変更を行いたいのですが、どこに行けば良いですか?」
「調度、巡回時間だ。案内してやるよ。ちょっと待ってな。」
どこかに連絡を取り、代わりの警備員が来ると、学校案内をしながら丁寧に事務所まで連れて行ってくれた。
「丁寧に案内して頂き、ありがとうございました。」
頭を下げて礼を言うと、警備員はニコニコ笑いながら手を振り、去って行った。
手続きを済ませた後、事務員に寮の部屋の鍵を渡され、寮に案内される。
「君の部屋は、ココだ。寮の規則は同室者に教えてもらってくれ。」
さっきの警備員とは対象的に無愛想な男の事務員は、そう言うと去って行った。
部屋のドアをノックすると、返事と足を擦るような音が聞こえドアが開いた。
「俺、安倍晴明。今日から同室、よろしく。」
そう言うと、
「あぁ、来たか。オレ、中2男子寮・寮長の源博正。ヨロシク♪ま、入んなよ。」
と、手招きをしながら同室者は笑顔で返してきた。
部屋は、10畳くらいのフローリングに、ベットが左右の壁にそれぞれ引っ付けてあり消灯台を兼て枕元のサイドに1組づつ机と椅子が並べられ、中央にちゃぶ台が置いてある。
「ヨッコイショ。」
片足を擦りながら自分のベットまで行くと、腰を降ろし、俺に話し掛ける。
「安倍君…あ、晴明でいい?簡単に寮の規則を教えちゃる。外出・外泊は届けを事務所に必ず出す。門限は8時。もし、門限を過ぎる時は理由付きで寮長に連絡。コレ、管理用のオレのピッチ番号、無くすなよ。それと、女子寮への出入り禁止。後は、禁酒・禁煙。ま、未成年やから当然やな。何か質問はある?」
「バイトっていうか、内職あり?」
「内職ぅ?基本的にバイト禁止やけど、事情によっては可能。ケド、内職でオカンみたいに花でも作るんかぁ?(笑)」
心底明るい風な源はケラケラと笑いながら、聞き返した。
「違う!遠縁のおばさんに『うちから通わない?』って、言われたケド『寮生活するって決めてたから、何もしなくていい』って、言ったケド、生活費がどうしようも無くて…。」
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