Haven's door

□heaven's door外伝
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戻って、脇息に手を突いたところで女房達がやって来た。

『ミヨ、あんたは姫様の側に居て今日は何をしたのかい?』

ミヨが私の側を離れるのがわかる。
開口一番、一番嫌味な女房がミヨに問い掛ける。

『今日は、姫様と日向ぼっこをしました。』

沈んだ声のミヨ…。
私が嫌っているように、ミヨも嫌っているのが判る。

『日向ぼっこですって!?
姫様は歩けないのに、どうやって連れ出したと云うの!?』



ミヨ、ミヨ…。



私は、ミヨを探して部屋を這う。

『きゃーっ!!姫様が、動いているわ。』

私の嫌いな女房の一人が声を上げる。

『衣が汚れるわ!ミヨ!あんたが姫様に教えたの!?なんとか云いなさい!!』

トタトタと小さな振動が近付き、私の左腕にミヨの手が触れる。



ミヨを守らないと……。



後ろ手にミヨを右手で引き寄せ、背中に隠す。

『あら…姫様ったら、自分で食事すら出来ないのに、ミヨの事を守ろうとしているわ。』
『姫様が庇うんだから仕方ないわね…。ミヨ、覚えておきなさい。』
『それより、さっさと食べさせて、さっさと寝る支度して、お菓子食べましょうよ。』

云いたい放題な女房達は私の世話をする。
世話焼き係の女房達は、私を寝所に寝転ばせると退散して行った。

「ミヨ、ミヨ…。」

私が私なりにミヨを呼ぶと、ミヨが私の手を握る。

『姫様、ミヨは此処に居ます。』

私がミヨの手を握ると、ミヨはもう片方の手で私の手を撫でる。

「ミヨ…ミヨにだけ教えてあげる。
今夜、私の大切な方が来るの。
夢の中で沢山の色々な事を教えて下さった方…。
ミヨの事も紹介したいの…。
ミヨ、一緒に待っててくれない?」

ミヨの返事を待つけれど、返事がない。



私…上手に伝えられなかったのかしら?



不安になっていると、ミヨの手が離れる。

「ミヨ?」

『姫様…ミヨは、姫様に隠していた事が有ります。
ミヨは、人の振りをしているだけの晴明様の式神です。
姫様がお話になられている言葉は、晴明様とミヨにしかわかりません。』

ミヨの言葉に驚く私。



ミヨが、式…神?
式神って…?



『夏姫、約束通り参りました。』

強い風が吹き、晴明様の声がする。

「晴明様…。」

『ミヨ、ご苦労だったね。』

『晴明様…ミヨは、まだまだ、姫様の元に居とうございます。』

『うん。まだまだ夏姫の処に居て貰うよ。
居てくれなきゃ困る。
姫には、もう少し外に出る楽しみを知って貰いたいからね。
夏姫、今日は貴女の目が見えるようにしよう…と、云っても私とミヨと三人で居る時か、どちらか一方と二人だけで居る時に限るのだが…。』

「……どうして場合に限るの?」

『貴女は、遥か昔…貴女の前世が受けた怨念の所為で、目と耳と脚が不自由になった。
完全に治すには根から断たなければならない。
同じように転生した相手を見つけなければならないのだよ。』

晴明様の言葉に俯き、私は沈黙する。



私の前世…私は、前世の記憶なんて無い…。
どうして私が苦しまないといけないの?



『大丈夫だよ、夏姫。必ず、その柵から解き放つ。
貴女も、貴女の前世も、決して悪くは無いのだから。』

晴明様の両手が私の頬を包み、優しく抱きしめられる。

「晴明様…。」

香の匂いが鼻腔を擽り、幸せな気持ちになる。
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