作成中

□其の肆〜桜の丘3〜
1ページ/80ページ

三度目の私は、小学校の臨時教員で、ある日突然付き合ってた彼に別れ話をされた。


瑠菜side


彼からお洒落なバーに呼び出され、何かと思えば彼は、ドリンクを頼まずに私に言った。

「あのさ、俺ずっと考えてたんだけど、別れてくれない?」

付き合って3年…個人的には、結婚も考えていた彼から突然別れ話。

『は…!?何で?』

「正直、最近のお前めちゃくちゃ重い…。
お前ん家、行ったらウェディング雑誌あるし、街中歩いてたって、ドレスばっか見てるし…。
俺、お前と結婚する気は無かったんだけど、お前は結婚する気満々だしさ…。
そういうの俺、嫌なんだよね…。」



つまり私とは、遊びだった訳ね…。



私は思いの外、頭は冷静で、カルアミルクを頼むと、彼を横目で睨みながら冷たくあしらう。

『で?これから本命に会いに行く訳?
臨教なんて、安月給だものね…。
半ヒモ生活のアンタには、さぞ頼りに成らない女でしょうよ。』

この駄目男…、フリーターのくせに、こういうお洒落な店や美味しい店ををよく知ってるから頭にくる。
黙っている彼の携帯を取り上げる。

「おい、何して…」

『私のデータ消去!番号もメアドも、メールも着歴も発信歴も全部消すの!』



こんな男の携帯にデータ残すなんて癪だわ!!



私は自分のデータを消し、ついでに着歴で一番多く名前がある女に電話した。

「あ、もしもし?ケイちゃん?何?何?急にどうしたの?アタシ今、ケイちゃんの事考えてたのよ。」

馬鹿っぽい甘ったるい声で機関銃のように喋る女。



この男、こんな女が好きなのか…。



私は、バカ男に携帯を差し出すと、カルアミルクをイッキ飲みして、おかわりを頼む。

「…瑠菜、飲み過ぎんなよ…。」

通話対応しながら、優しい言葉を掛けるケイ。
余計に苛立つ。
私はまた携帯を奪うと相手の女に言ってやった。

『私、3年間ケイに遊ばれた女だけど、たった今、フラれたの。
貴女、ケイにもてあそばれないようにせいぜい頑張りなさい。』

そう言って、通話中の携帯を切ると、それを投げ捨てた途端、女が入店し辺りを見回す。

時間があまり遅くないせいか、客はケイと私だけ。

女は、携帯を拾い私の頬を平手打ちするとケイの腕を引っ張り店を出ていく。
彼女のバックからはみ出しているのはケイとお揃いのストラップ。



あぁ…、そういう事…。



『終わったな…。』

溜め息混じりに呟き、ちょっと温くなったカクテルを飲んでいると、おしぼりをバーテンの長身の男はさりげなく私に差し出す。

「頬…真っ赤ですよ。コレ、どうぞ。」

『ありがとう…ございます。』

おしぼりを受け取り、頬に当てる。
打たれてヒリヒリしている頬にヒンヤリと気持ちいい。



コレ、わざわざ氷水に浸してくれたんだ…。



バーテンの優しさに思わず涙が出そうになる。

『なんか…ホントに、すみません…。お店で騒いで、おしぼりまで…。』

バーテンは、苦笑しながら首を左右に振る。

「後2時間したら忙しくなって、オーナーが来ます。
気持ちが落ち着く迄、ゆっくりして行ったらどうですか?」

そう言うと、注文をしていないホットミルクを出される。

「サービスです。」

ニコリと笑うバーテンの笑顔は、どこか幼くて優しい。
ホットミルクの入ったマグカップは、ヨンエックスのキャラクター、リラコクマな上に「かなめ」と油性マジックで書かれており、客用では無い事が一目でわかる。

『おいしい…。』

一口飲むと何だか落ち着く。

ホットミルクを飲み終えるとバーテンと他愛無い話をしながらカクテルを数杯飲んだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ