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□其の壱〜桜の丘〜
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そう…あれは、私の目が見えなかった頃の話…。


雛芽side
私は、十二単を身にまとい、盲目ながらも世の中の他の姫達と同じように何不自由無く…むしろ、それより自由に過ごしていたかも知れない…。


その頃の私の家は、代々優秀な陰陽師家系で超能力を持ち産まれてくる子供も少なくなかった。
私も、その内の一人…。
目は見えねども、人並み外れた記憶力と聴覚を持ち、一度会った事有る人なら足音や心音・息遣いで見分ける事が出来た。


『ロの八…』
「う…う゛〜ん、負けました…。」
じゃらじゃらと石を片付ける音を聞きつつ、私は扇を弄り余裕ぶる。
『八千代、随分粘ったじゃない。』
「雛芽に勝ちたかったの!今日も全然、歯が立たなかったけど…。」
私の双子の姉、八千代はホントに悔しそうに言葉を続ける。
「貝合わせも、勝てないし、琴も、雛芽にはかなわないわ…。」
『双六は八千代の方が強いし、八千代の方が文を沢山貰うでしょ?兄様が言ってたわ、八千代の字はホントにキレイだって。きっと素敵なお婿さんが来るわ。占術だって、八千代の方が優れてるし…。』
私が、八千代を励ましていると、遠くから兄の足音が聞こえてきた。


『あ、兄様が帰ってらした…。』
「えっ!?何処?」
『東門に向かってるわ!私、お迎えに行って来る!!』
「雛芽!!東方は今日、私達にとって物忌みの方角よ!聞いてるの!?」
私は、兄様の帰宅を心待ちにしており、居ても立ってもいられず、姉の言葉に耳をかさなかった。



大好きな兄様、愛しい兄様、一番に『お帰りなさい』をいうの!



そんな気持ちで東門へ向かっている途中、身体に異変が起きた。

『あ、熱い…身体が、熱いよ…。』

東門に近付くにつれて、身体がムズムズしてくる。

『あ…アンっ…ヤダ…、何か、変…。アソコがムズムズしてる…。』



もうすぐ、兄様が帰ってくるのに…。



なんとか東門にたどり着いたのと、兄様が東門を開けたのは、ほぼ同時だった。
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