Haven's door〜番外編1〜

□記憶(博正×優)
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そんなある日、俺のプライベート携帯にメールが入ってきた。
『今日の放課後、中等部屋上で待ってます…。優』
「晴明、今日の予定は一年の通学生んちに行くんやったよな?」
「?あぁ…髪が伸びる人形のお祓いだが?」
「悪ィ。晴明、中等部寮長会議の予定が入ったけ行けん。道案内が出来そうにない。晴明、門限までには帰っち来るんぞ!」
「?あぁ…。」
教室で晴明と別れた後、俺は指定された場所に行った。
「あ、先輩!」
俺の姿を見ると一目散に駆けてくる。まるで仔犬みたいだ…。
「先輩!ボク、先輩に聞きたい事あって!」
「何?」
「先輩!先輩は、先輩は…、晴明って人とボク、どっちが大切なんですか?」
今にも泣きだしそうな優を抱きしめ、俺は言った。
「どっちも大切だよ。ただ、晴明は友達として大切なだけ。お前は俺の恋人…じゃなかったか?」
顔を覗き込むと真っ赤に頬を染め、潤んだ瞳から雫が零れる。
「せ、先輩…でも、先輩はボクの事…素面で抱ける?」
「え…?」
「だって、先輩がボクを抱く時って、いつも熱出した時だけじゃないか…。」
「ゔ…それに関して返答しないが、抱けるよ。」
「じゃ…ボクの事、抱いて…。いっぱい、いっぱい愛して…。」
−なにかおかしい…。どこか変…。−
「優、どうしたんだ?一体…。」
額に手を当ててみるが熱はない。
「怖いんだ…。先輩を晴明って人にとられそうで…。ねぇ、先輩…。」
擦りつけられた身体は淫らな熱を帯び、俺の理性を奪う。
「優…。」
「先輩…。」
唇が近付き、重なり合う寸前…、
「あれ?おかしいなぁ…ドアが開いてらぁ。おい、誰か居るのか?」
警備員の声と近付いて来る足音がする。
俺は舌打ちをして優から離れると、営業スマイルで申し訳なさそうに警備員に謝った。
「あ…すみません、警備員さん。後輩寮長から相談を受けていたもので…。」
「相談?お前等、寮生なら寮内で相談したらどうだ!人に迷惑掛けるんじゃない!!」
よほど早く帰りたいのか、残業をしたくないのか、意味不明な事を口走っている。
「まぁまぁ…警備員さんの貴っ重〜な時間を奪った事については謝罪したやないですか。それに、寮内で話せる相談ならこんなトコで話さないですよ。」
「そ、そうか…。ま、遅くならないように帰れよ。寮長が門限を守れないなんて事が無いようにな。」
「あ…、ボク、名乗っていませんでしたね。中等部2年寮の寮長、源といいます。屋上の鍵、後で警備室持って行きます。」
相手を多少睨みながら『柊寮長が悩んでいる発言』をしていると、薄笑いをしながら警備員は俺に屋上の鍵を渡すと去って行った。
俺の隣に目線を戻すと不満気な恋人がいた。
「優、どうした?」
「ボク、こんなに頑張ってるのにィ…ムード大無し…。」
「ハハハ…確かに…ぶち壊しやな。けど、せっかくやから、もう少し二人でココにおるか?」
今にも泣き出さんばかりの優の肩に手をまわし、額にキスをしてやる。時々思う…。
−優と居るとちょっと疲れる。晴明だったら、こんなに疲れないかな…。−
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