「それにしてもさぁー、ゆきはほんとかっこよくなったよねぇ」
うふふ、と笑む柔らかい仕草と共に鼻にかかった声が耳を擽る。
一体どうしてこのようなことに…頭が痛い。

「佐助、飲み過ぎではあるまいか?」
俺自身はさして酒に弱いわけでもないのだが、研修初日という疲労も重なり少し酔いがまわってきていた。

「ん?ゆきは足りないんじゃなーい?」
ほら!もっと飲めぇ!なんて。無自覚は本当に質が悪いと思う。

「俺はもうよい。少し飲み過ぎた…そろそろ休んだ方が、」
そう言いかけ、遮られた。
唇に触れる柔らかいものから、酒を直接飲まされる。
眼前では佐助の長い睫毛が揺れていた。

「んん、」

流し込まれた液体を飲み込むと舌がぶつかる。

佐助が悪い、そう心で言い訳を呟いてから俺はその舌を追うようにして
佐助の口を塞ぎなおした。

「ん…ふ、ぁ」
どれくらい経ったのか、離れた唇が名残惜しそうに、ちゅっと鳴く。

「ふふ、ゆき、ちゅーじょうずだね」
そう言われ、はっとする。俺は何をしている…相手は酔っているのだぞ!
そう思いながらも、長年想い続けていた人が相手なら尚更。もっと触れたいと思うのが当然だと主張したい。

「ちゅー、きもちよかった」
へにゃり、と笑ってよしかかってきた佐助に堪らなくなり
後ろからそのまま抱き締めた。

「佐助…」
項に鼻を埋め、深く匂いを嗅ぐ。アルコールと少し甘い匂いがした。

「ん、ゆき…くすぐったいよ」
未だ愉快そうに、えへへと笑う佐助の耳元に唇を寄せた。
俺自身、かなり酔っていたのかもしれない。

「佐助」
出来るだけ低く囁き吐息を掠める。すると佐助はひゃっ、と奇声をあげ肩を竦めた。

「…どうしたの、ゆき?」
此方を見ようと顔を向ける佐助をよそに、俺は左手で佐助の服の下を弄った。
「ん、ちょっと…ふふ、くすぐったいってばあ!」
こら、ゆき!と抵抗するも、その力は抵抗と言うにはあまりにも小さい。酒の力とは実に恐ろしいものだ。

無言のままに俺は佐助の胸を探り当て、
指先で乳輪をなぞった。

「んぁ、」

ぴくん、と微動する。かわゆい。

前を向かせてそのまま床に押し倒した。
服を捲り上げ、薄紅色の突起を舌で愛でる。

「うぁ…っや、ゆきぃ」

上半身を露わにさせられ、寒いらしい。佐助の腕は胸元にある俺の頭を抱きかかえた。

「ゆき、あかちゃんみたい…っん」
何をされているのか分かっていないのであろうか?
しかし声は甘く、感じていることは確かだ。
俺とて経験こそないが、それなりには出来るのだ。と思いたい。

「俺は赤子ではござらぬ。佐助、気持ちよいか?」

僅かに歯を立て、甘噛む。

「ひぁっ、ん…くすぐったいかなぁ…きもちい、かも?」
陽気に笑っていたさきとは違い、
頬は朱みを帯びていた。

暫く、噛んでは舐め、優しく愛撫を繰り返していると、佐助の腕から力が抜けた。

「佐助…?」
不思議に思い、顔を見上げると
静かに寝息を立てている。
……やられた。

幸せそうに寝ている佐助と、自身の猛った熱とを交互に見つめ、俺は深い溜息をついた。

佐助をベッドへと運び、布団をかけてやる。
俺はそのままトイレへと足を進めた。

結局、佐助に伝えられなかった。
好いている、と。
情け無いやら恥ずかしいやらで落ち込んでいた俺は思い出したように、押し入れの布団をひいて大人しくその中に収まった。

朝が来なければ…と願わずにいられない自分に渇を入れてくださるお館様がいないことを、ほんの少し寂しく思った。



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