空飛ぶ広報室

□Supplement Episode 8 U
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「本当にそうでしょうか?」
 しかしそこに口を挟んだのはリカだった。
「え?」
「芳川さんは本当に友情だったんでしょうか?」
 リカは続けて言った。
「……友情だって、思わずにはいられなかった……のかも……」
「稲ぴょん?」
 リカの様子を不穏に思った片山が声をかけるとリカはハッとなり、
「……ごめんなさい……何でもないです……」
 それだけ言うと、空井視線を感じ一瞬そちらを見たがすぐに目を逸らした。

 同じなんだ……。

 リカは秋恵と自分を重ねていた。

『私、空井さんて私のことが好きなんじゃないかなって思ってたこともあって。全然勘違いだったんですけど』

 ああ、私も同じだ。私はこの人と同じなんだ……。
 胸の奥がチクリと痛んだ。

『女として見てるんじゃなくて、懐いてる?みたいな』
 
 懐かれてる。

 珠輝の言葉は的を得ている。

『仲良くなるとすごい人懐っこいんですよね』

 秋恵もそう思っていたのだから、きっと彼は気の許した相手にならみんなそうなんだろう。
 空井の話す順番のおかしさも、思わせぶりなセリフが天然であることも、短い付き合いからでもわかっていることではないか。
 秋恵もそのことがわかって、自分の気持ちに蓋をしたのかも知れない。
 
 罪作りな人だなあ……無自覚なだけに性質が悪い。

 リカは流れる窓の外を眺めて胸中で呟いた。
 
 リカに露骨に目を逸らされ、空井は胸が小さく痛んだ。
 先程の言葉。彼女は一体どうしたというのだろうか?
 自分は何か拙いことをしたのだろうか?
 空井はチラチラとミラー越しにリカを見て嘆息した。

「あれ?急に黙っちゃってどうした?」
 急に重くなった空気に、全く空気の読めない片山がそう言うと、
「あ、片山一尉、今後のスケジュールのことですけど」
 と空気の読める比嘉が誤魔化すように話を切り出した。
 あなたが振った話が原因でこんな空気になったんですよ、とは言えず、ただスケジュールの確認をする。

 途端、意識をそちらに移した単純な片山は比嘉と今後のことについて話し始めた。
 リカはやはりそれを何ともなしに聞いている。

 このPV撮影が終わった後も空井と秋恵はプライベートで会うのだろうか。

 もしそうなったとしても、私には関係のないことだ。

 あれだけ可愛い人だし。ただそこに可愛らしく存在してる人だし。私には出来そうにないし。方法もわからないし。
 でもあんな人だったら、どんな男の人も好きになっちゃうんだろうな……。

 きっと、空井さんも……。

 リカはほんの少しの嫉妬と羨望が自分の中で渦巻いているのを感じながら、流れる窓の外の景色を眺めていた。


 end
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