空飛ぶ広報室

□Supplement Episode 8 U
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「そういや稲ぴょん」
「何ですか?」
 片山の問いかけに、先程のこともあってかリカは憮然とした表情で返事をする。
「稲ぴょんさ、あの藤枝さん……と同期なんだよな?」
「藤枝?そうですよ」
「やっぱ二人で飲みに行ったりするの?」
 何か期待するような物言いの片山に嫌なものを感じたが、リカは正直に話した。
「帰りに一緒になったりしたら。あとお互いに借りを作ったら奢ったりします」
「そ〜なんだ〜」
 片山は意味有りげに空井の方を見た。
 空井はリカの言葉が気になり、片山の視線には気が付いていない。
 すると片山が続けて言った。
「やっぱさあ〜そういう風に見たりとか……ってないの?」
「そういうのって?」
 リカは首を傾げる。
「男、として」
「藤枝を?」
「そう」
「ないです」
 リカは即答した。
「えらくキッパリ否定したね」
「友達ですから」
 藤枝とはお互いそういうことは考えたことなどない。
 こちらも男として見ていないし、向こうも女扱いしていないことくらいわかっている。
 気のおけない仲間のような関係だ。
 というか、本当にこんな話好きだなあ……どこかしら楽しげに話す片山を見てリカは小さく嘆息する。
 
 一方、空井はリカの言葉に安堵の溜息を吐いた。

 すると片山が何か思いついたように口を開いた。

「稲ぴょんは男女の友情は存在するって思ってるタイプ?」
「……そうですね……」
 リカは暫く考えると、
「藤枝とは実際そうですし。片山さんは違うんですか?」
 そう言い、片山に問いかける。
「俺はねぇ、どちらかに愛情があるって考える方かな」
 片山はいい意見を言った、とばかりにドヤ顔をしている。
「ふ〜ん」
「興味ない?ねえ興味ないの?」
「いや、片山さんが話振ってきたんで」
 リカがさらっとかわすように言うと、片山は余計に食いついてきた。
「ちょっとは興味持とうよ?そだ!! 空井はどうなんだよ?」
 片山は突然空井に話を振った。
「自分ですか?」
「男女に友情はあるか?」
「……よくわからないですけど……ある……んじゃないですか?」
「空井は男女に友情はある派かあ」
 片山はふ〜んと呟き空井を凝視する。
「ある派ってワケじゃ……そういうこともあるかな?って……」
 空井は片山の視線とどう言っていいのかわからないのとで、しどろもどろになって答えた。
「秋恵ちゃんか?」
「え?」
「秋恵ちゃんとは友情だったってか?」
「あ、はい」
 空井は片山の問いにそう返事をした。
 今思えば友情だったと思う。
 二人で話すのは楽しかった。
 二人で時間を忘れて話して、その時間がとても充実していて。
 しかし好意ではあったが、恋愛感情というよりもほとんど友情だったように思う。

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