空飛ぶ広報室

□Engagement report R & Y ver.
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「柚木さん、稲葉です」
『おー稲葉ぁ、電話待ってたぞー!!』

 松島から帰ってきた翌日、仕事が終わり一人部屋に戻ったリカはテーブルの前に正座をし、気持ちを落ち着かせてから電話をかけた。
 やはりこの人たちには報告しなければいけない。元空幕広報室のあの人たち。
 リカと空井を見守っていた、あの人たち。
 まず一番気心知れたこの人、柚木典子。今は槙婦人であるけれど。

「お、遅くなってすみません……」
 何となくどもってしまう。やはり少し緊張する。
『んで?どうだった?松島』
 柚木の声音は何となく……テンションが高いという感じだった。
「……ええ……」
 リカはとりあえず当たり障りの無い受け答えをした。
『空井、元気だった?』
「はい、元気でした」
 空井と再会した当初は少し影があるというか、やはりお互い気まずいものがあった。
 会いたいけど会うのが怖い。だけど会いたい。お互いにそう思っていた。
 だけど会ってよかったと思う。
 会ってお互いの運命が再び回り出したのだから。

『……で?』
「で?」
 現実に引き戻されるようなやはり若干テンションの高い柚木の声に、リカは思わずおうむ返しのようになった。
『どうだった?』
「……知ってるんでしょ?」
『なにがあ〜?』
 まったく白々しい。知ってるくせにわざとらしく聞いてくる。ホント性質が悪い……。
「……うちの阿久津が知ってるんだから、柚木さんたちが知らないわけないと思うんですけど……」

 鷺坂からの怪メールはリカの上司である阿久津にも送られていた。
 ということはこの人たちに送られていないはずはない。

『え〜?なんのこと〜?』
 まだしらばっくれる気だ。
「……ゆ〜ず〜き〜さ〜ん」
『ハハハ、ゴメンゴメン!! 知ってるよ、結婚のこと』
「……そういうことになっちゃいました」
 
 松島でリカは空井と再会して、ぎこちないながらも仕事をこなして、町の人たちにブルーインパルスの飛行訓練を見て貰い、そのまま空井に会わずに東京に帰るつもりだった。
 
 しかしバーティカルキューピッドを見たとき、二人で見たときのことを思い出した。
 そのとき、いてもたってもられなくて、リカは空井を目掛けて走った。
 空井も、リカを目掛けて走って来ていた。
 
 会いたかった。本当は会いたかった。会わずに帰ることなんて出来なかった。
 
 会って、あなた無しでは私の幸せは有り得ないのだと、面と向かって言いたかった。

『稲葉さんのことっ、幸せに出来るかどうかわからないけどっ』
『私の幸せはっ、私が決めますっ』
 
 そう言い合って、空井とリカは共に生きることを選んだ。

 ほらね、空井さん。
 私こんなにも幸せです。
 私の幸せはここにあるんですよ。

 リカの幸せは空井と共にあること。

 遠回りをして、ようやく手に入れた幸せだった。


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